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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第16章 【ウィンガーディアム・レヴィオーサ】


 クリス はグレンジャーの上に覆いかぶさったままローブから杖を探り当てると、無我夢中で杖を振った。しかし杖の先から出た火花はトロールの脇を通り過ぎただけで命中はせず、ついにトロールの振り下ろしたこん棒がクリスの背中をかすめた。 
 もうだめだ、次で殺される。クリスは目をつぶって衝撃が来るのを待った――しかし、いつまで経ってもこん棒がクリスの体に振り下ろされる事はなかった。

「クリスッ、今の内だ!逃げろ!!」

 なんとハリーがトロールの首にしがみ付き、杖を鼻に突き刺してトロールと格闘していた。流石のトロールもこれは効いたらしい、低いうなり声と挙げながら必死に体をよじってハリーを振り落とそうと躍起になっている。
 クリスはハリーの作ってくれたチャンスを活かすべく、グレンジャーの上に乗せていた体を起こすと、彼女の手を持って立ち上がった。

「立て、立つんだグレンジャー!逃げるぞ!!」
「で、でも足が……キャアアァッ!」

 苦し紛れに暴れるトロールの太い腕がクリス達のすぐ隣の壁に激突した。こんな狭い場所では、状況が少し変わったところで命の補償は得られない。さらにハーマイオニーの叫び声に刺激されたトロールが大きく吠えたかと思うと、より乱暴に体をねじり回し手当たりしだいにこん棒を振り回した。

 これではハリーだって、あと何秒もトロールを抑えておく事は出来ないだろう。こん棒が頭上高くかかげられた時、クリスはグレンジャーを庇うようにキツク抱きしめると覚悟を決めた。

「ローーーーンッ!!!」
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!!」

 ついに限界に達したハリーが力の限り親友の名前を叫ぶと、それに呼応したロンが部屋いっぱいに響く声で、1番最初に思いついた呪文を叫んだ。杖の先はぴったりこん棒を指していて、トロールの手からこん棒がスルリと抜けると、空中を2・3回転して見事持ち主の頭に落下した。

 鈍器と頭蓋骨のぶつかり合う鈍い音が女子トイレに響き、トロールは目を引っくり返しそのままうつぶせに倒れたてしまった。

「……やったの?」
「多分……完全K・Oだ」
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