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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第16章 【ウィンガーディアム・レヴィオーサ】


 共犯者であるロンは、ハリーと一緒になってハロウィンの飾りつけとご馳走に目を輝かせ、グレンジャーのことなどすっかり忘れていたようだったが、クリスは図書館での事もありグレンジャーのことを忘れるなんて出来ずにいた。

 するとちょうどそこに困り顔のラベンダーとパーバティがやってきて、ハーマイオニーがトイレで「1人にして欲しい」と言って泣いていたんだけど、理由を知らないかと尋ねて来た。流石にこれにはクリスだけでなく、ロンもハリーも気まずい思いをしたみたいだったが、ロンの主張はどこまでも変わらなかった。

「あいつには丁度良い薬だよ。それに1人にしといてくれって言ってたんだから、好きにさせてやれば良いじゃないか」

 それは半分クリスの意見でもあった。しかしもう半分では“折角1人なんだから、これは謝りに行く絶好のチャンスではないか”という気持ちもあった。謝りに行くべきか否かと葛藤していると、それを察したハリーが声をかけた。

「そんなに気になるなら、行ってきたら?ハーマイオニーのところに」
「でも……」

 それが出来るなら、こんなに苦労はしないのだ。クリスは決心のつかぬまま、皿の上のご馳走を見つめていた。気が付けば夕食の時間が始まってから、もう30分以上経っている。意地を張ってもお腹は減るんだ、もう少し待てばグレンジャーだって泣き飽きて戻ってくるだろう。

 そう考え直した矢先に大広間の扉が勢い良く開かれ、クリスは素早くそちらに目を向けた。だが広間に入ってきたのはクィレル先生だった。

「みみみなっ、皆さんた、たたたたたいっ…たいへ…大変で、でです――」

 クィレル先生は日頃から挙動不審で少々変わった言動の目立つ人だったが、今日はいつもより数倍様子がおかしかった。ここまで全力疾走で来たのか激しく肩で息をし、トレードマークのターバンは半分ほど解けてしまっている。しかも滴り落ちるほど汗をかいているのに、顔は真っ青で恐怖にゆがみ、体はガタガタ震えていた。

「トトトトロールが、ちち地下っ…地下室に――わた、私はおしっ…お伝えしなくては、と………」

 それだけ言うと、クィレル先生はその場で気を失ってしまった。途端に大広間は混乱した生徒の叫び声が飛び交い、ダンブルドアが紫色の火花をいくつか出して注意を引くまで一時騒然となった。
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