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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第16章 【ウィンガーディアム・レヴィオーサ】


 ロンの何気ない一言に、クリスはピタリと手を止めた。確かにネサラは喋らない、というより喋れない気がする。何か理由があって訓練をしなかったはずだが、その理由が思い出せない。まだ卵だったネサラを貰ったのが6歳くらいだったという事はかろうじて憶えているのだが。

「なんでだっけな……初めはヤナフが私の使い魔になる予定だったような気がするんだけど……」
「だけど?」
「忘れた――まあ細かいことは気にするな。少なくとも言っている事は理解しているから不便ではないし、それに今さらネサラ以外の使い魔を持つ気もないしな」

 クリスの言葉に、ハリーもうなずいた。結局はそこに行き着くのだ。便利なペットも時々は羨ましくなる事もあるが、やっぱり自分のペットが1番だ。しかしロンだけは首を振って否定した。

「羨ましいね。僕もせめて話せなくてもいいから、もう少しコイツが役に立ってくれれば、そんなセリフが言えるんだけど」

 ロンはローブのポケットからペットのスキャバーズを取り出した。ハロウィーンの料理をお腹いっぱい食べさせてもらったのか、丸いお腹をいつもの倍に膨れさせて、ウトウトと眠そうに瞼を瞬いている。これほど無芸大食という言葉が似合うペットもそうそういないだろう。ロンはスキャバーズのヒゲを軽く引っ張りながら、ため息をついた。

* * *

 流石に2ヶ月も経てば、授業だっていつまでも基礎や理論の勉強ばかりではなくなり、いよいよ実技の演習も加わってきた。呪文学の授業では前回に杖の振り方を練習し、今回はいよいよ実際にものを宙に浮かせる授業だったので、みんな始まる前から期待に胸を膨らませ落ち着きがなかった。
 クリスも例に漏れず、ハリーとロンの3人で前回習った杖の振り方を復習しながら、頭の中ではすでに軽がると物を浮かせている自分を想像して胸を弾ませていた。しかし最近の傾向からして、そんな簡単にことが運ぶと思うほうが間違っていた。

 まずこの授業は出だしからして最悪だった。フリットウィック先生が授業の始めに「ペアを組んで練習する」と言っていたので、クリスはいつも通りハリーかロンと組んでやるつもりだったのだが、人数の関係上先生が勝手にクリス・ロン・グレンジャーの3人で組を作ってしまった。これを聞いたとき、クリスはもう呪われているとしか思えなかった。
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