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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第15章 【不安と焦燥】


「でも、もうこんなに辛いなら、召喚師になんてなれなくったっていい。それで父様や母様やチャンドラー、それとルシウスおじ様やナルシッサおば様に見捨てられたって構わない」
「君はまたそんな下らない事を……ある訳ないだろう、見捨てられるなんて」
「どうしてそういい切れるんだ?所詮皆が求めているのは私の血と力だ。それが無かったら――私なんて必要ないだろう」
「それは……本気で言っているのかい?」
「………」

ドラコの声には軽蔑が混じっていて、クリスは耐え切れず目を伏せた。違う、本当はこんなことを言いたいんじゃない。だけど思考はどんどん悪い方へと流れていってしまう。
正しいと信じた道を進むとき、人はどこまでも強くなれる。

 召喚術の手がかりを突き止めるため、がむしゃらに頑張れたのはその所為だろう。反対に自分が間違っていると感じた時、人の精神はどこまでも弱く脆くなる。まさに今のクリスがそれだ。

 何も言わずに俯いたままのクリスの頬にドラコ手を当てた。そしておもむろに両手でつねると、そのまま力ずくで無理やり顔を引っ張り上げた。

「いっ、いひゃい!いひゃいほヒョラホ!」
「これくらいしなきゃ、今の君は顔を上げないだろう?」
「らかりゃって、おーりょふにうっらえへいいおは!?」
「何を言ってるのかさっぱりだな」

 ドラコが手を離すと、クリスは痛む頬を押えながら上目遣いにドラコを睨み付けた。クリスの炎のような赤い目がドラコの氷のように冷たい灰色の瞳に喰らい付くと、何故だかドラコは嬉しそうに微笑んだ。

「やぱりクリスはそれくらい威勢がなくちゃな、面白くない」
「人の頬っぺたつねっておいて面白くないとはなんだ」
「だってそうだろう。さっきの君、いったい何だあれは。あんな腑抜けた女が僕のクリスだなんて思いたくも無い。なにが“もう召喚師になれなくってもいい”とか“皆が望んでいるのは召喚師の血と力だけだ”なんてさ。そんなお綺麗なセリフは聞いていて腹が立つ。いいかい、出来る出来ないじゃない、やるんだ」

 好き放題に言われて腹が立つのはこっちだと思ったが、何も言い返すことが出来なかった。くやしいが全部ドラコの言うとおりだ。
 ドラコはクリスの肩をつかむと、目を見つめながら暗示をかけるように強く言い聞かせた。
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