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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第15章 【不安と焦燥】


「どうしたんだ、こんなところで――何を怒ってるんだ?」
「なんで分かったんだ?」
「君の目を見ればすぐ分かるさ、何年の付き合いだと思ってる」 

ドラコが平然と言ったその言葉が、妙にクリスを安心させた。ハリー達に無くて、ドラコにあるものはこれだ、例え何があっても何度喧嘩しようとも必ず仲直りするのは、これがあるからなんだ。
生まれたときから一緒にいて自分を分かってくれる人間というのは、傍にいるだけで不思議と心が休まる。

「珍しいな、ポッター達は一緒じゃないのか?」
「いつも一緒にいるわけじゃないよ。ドラコこそグラップとゴイルは?」
「僕だって四六時中あいつらと一緒ってわけじゃないさ」

 お互い1人きりだと知ると、どちらからともなく廊下を歩き出した。行き先はどこか分からないが、それはドラコだって同じだ。それでもお互い尋ねるような無粋な事はせず、気の向くまま足の向くままに廊下を歩く。それがまた心地良い。

「で、君は何をそんなに怒っているんだ?」

 まるで今日の天気をたずねるかのように、サラリとドラコが聞いた。クリスは一瞬どう答えようかと悩んだが、どうにも答えようがないので感じているそのままを口に出した。

「怒ってるじゃなくて、正しくは怒ってた、だ。あ……いや、やっぱりまだ怒ってるかな?でも怒ってるとはまた少し違うな」
「なんだそれは、結局どっちなんだ」
「分からないんだ、本当。でも気分が良くないのは確かだ」

 あんな事を言ったグレンジャーに怒っているのか、それともそんなグレンジャーを相手にした自分に怒っているのか、はたまた取りとめのない不安に怯えているのか。そのどれでもない様な気もするが、その全てでもある気がする。

「……ドラコ、聞いていいかな?」
「なんだ?」
「ドラコは自分がマルフォイ家の1人息子として生まれた事を、重荷に感じた事はあるか?」

 もう1つハリー達に無くてドラコにあるもの、それは境遇だ。多少の差はあれど、純血の家に生まれ、生まれたときから大きな役目を背負わされているという点はクリスもドラコも同じである。
 ドラコは言おうかどうしようか迷っていたが、クリスが思いの外真面目な顔で見つめてくるので、周りに誰もいないことを確認してから話してくれた。
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