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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第15章 【不安と焦燥】


「正直に言ったら?私知ってるのよ、最近あの三頭犬が何を守っているのか貴女が調べている事を」
「だから証拠がないって言ってるだろう、勝手な憶測でものを言うな」
「じゃあ貴女、最近何を調べているの?宿題や授業の予習でもなく、図書館からあちこち本を引っ張り出して、部屋でも夜遅くまで必死に本を読んでるのはどうして?」
「お前には関係ない事だ」
「関係なくは無いわ。私もあの時、あの場所にいたんだもの。もし貴女があの部屋の事について調べているのを先生方に知られたら、どうなると思っているの?きっとあの晩の事を調べるに違いないわ、そうなったら迷惑を被るのは貴女1人じゃないのよ」

 禁じられた棚直前で摑まった時もそうだが、クリスのことを嫌っている割には無視せずによく観察していたと思う。もし全世界お節介選手権があったら、間違いなくグレンジャーはその栄冠を手にするだろう。短いがこの11年間の人生の中で、ここまでお節介な奴なんて見たことが無い。それとも嫌いだからこそ、相手が違反を犯した時は徹底的に追及するタイプなのだろうか。その方がまだ理解できる。
 グレンジャーの勢いは留まることを知らず、さらにクリスを攻め立てた。

「今すぐこの事から手を引くべきよ、こんな事をして何になるって言うの?ばれたら間違いなくグリフィンドールから減点されるのよ、それも5点10点じゃないわ。一気に50点は減点されるかも知れない。そうなった時の事をかんがえた事はあるの?寮全体に被害が掛かるのよ、たった貴女1人の為だけに!」
「……それがどうした」

 確かに道徳的にかんがえれば、グレンジャーの言う事の方が正しいだろう。だが頭で納得しても感情がそれに追いつくとは限らない。まるで寮から点数が引かれることを、この世の終わりだとでも言うグレンジャーに、クリスは煮えたぎるような怒りが沸いてきた。
 この1ヶ月の努力を、それこそ睡眠時間を削ってまで費やした時間と苦労を、そしてそれを支えてきた“召喚師”への道という信念を、全て無駄だと言われたのだ。
クリスの心を支えていた最後の1つを、グレンジャーが知らず知らずのうちにへし折った。その瞬間、クリスの中で何かが爆発した。

「それがどうした、ですって!信じられないわ、貴女本当に自分の事しか考えてないのね」
「だったらどうだと言うんだ!!」
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