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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第15章 【不安と焦燥】


 怒りに任せてクリスは机を叩いた。
 ホグワーツの図書館は広さと本の数だけは実家の書斎以上だったが、当然その本のほとんどが一般生徒向けのものばかりだった。反対に家の書斎は数もさることながら、古くから先祖達が集めただけあって、怪しげな本や、今では販売や所持すら禁じられている書物が置いてある。モノがモノなので、どうせ調べるならその辺りの方が可能性は高いだろう。家に帰って調べられるのが一番なのだが、クリスマス休暇まではまだ日がある。
 もちろん千年も昔から存在するホグワーツだって伊達ではない。そういう類いの本も存在するのだが、それらの本が並ぶ本棚自体が立ち入り禁止の「禁じられた棚」となっていて、閲覧するには先生の許可証が必要になる。しかしろくに理由もいえない調べものをするために、おいそれと許可証を発行してくれるほどホグワーツの教師陣はマヌケではない。
 となると、残された道は唯一つ――

 クリスは席を立つと、いままで調べていた本を棚に返す振りをして本棚の迷路に消えた。万が一誰かに見つかったら「この本を返す棚が分からなくなって探していた」とでも言えばいい。
 ゆっくり、ゆっくり足を進ませ、あと2・3歩ほどの距離にきたとき――突然背後から肩をつかまれ、クリスは反射的に大きく肩を震え上がらせた。

「あなた、こんなところで何をやってるの?」
「――グレンジャー……」

 どうしてこういう時に限ってこの女が出てくるんだろうか、この1ヶ月話しかけるどころかクリスに近づこうともしなかったというのに。グレンジャーはクリスを掴んだまま禁じられた棚を離れると、人気の無い本棚の陰に連れ込んだ。

「さあ、白状なさい。どうしてあの本棚に近づいたのか」
「どうしても何も、ただ本を返そうと思っただけだ」
「嘘おっしゃい、あなた本当は禁じられた本が目当てだったんでしょう」
「残念だけど証拠がないな」

 いきなり言い当てられたが、クリスはシラを切り通す事にした。彼女の事だ、己の正義を押し通す為なら例え同じ寮の生徒といえど、先生に突き出すのはわけないだろう。現に彼女はあの夜の日に、そう言ってクリス達を脅してきた。
 ぐだぐだと問い詰められる前に逃げ出そうと摑まれた肩を振り払ったが、グレンジャーが今度はクリスの手首をガッチリととり押えた。
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