第14章 【波乱の幕開け】
「クリス、ちょっと話がある」
「えっ?なんで私なんだ?」
「そうだ!クリスは関係ないだろう、放せ!」
「関係ないのは貴様の方だろうウィーズリー、貴様は黙ってポッターの尻にくっ付いていろ」
この痛烈な皮肉に、ロンは顔を赤らめた。周りから『ハリー・ポッターのお供』として見られていることに、ロン自身薄々気づいているのだ。それでも、ロンは果敢に反論してみせた。
「関係なくはないぞ、クリスは僕らの友達だ」
「たかがっ!……たかがそれくらいで何だって言うんだ!僕はクリスの幼馴染でしかも許婚だ!分かったらさっさとそこを退けっ!!」
これにはクリスもロンもハリーも、そしてドラコの腰巾着であるグラップもゴイルも驚いた。普段から嫌みったらしく短気で、穏やかな印象などカケラも無いドラコだが、実はこんな風に声を荒げる事はほとんどない。そのもの凄い剣幕に圧され、皆が怯んだ隙にドラコはクリスの手をひっぱって廊下を歩き出した。
「あっ、ま、待てよ!クリスッ!」
「大丈夫だから先に談話室に行ってて、授業が始まるまでには戻るから。グラップとゴイルも付いて来なくていいからな」
長年連れ添った感から、この場はドラコに従った方が良さそうだと判断したクリスは、その場の4人にそう告げるとそのままドラコについて行った。
ドラコはずんずんと廊下を突き進み、城を出て、やがて人気の無い中庭まで来るとやっとクリスの手を放した。
「こんなところで、いったい何の用だ?」
「単刀直入に言おう、クリス。ポッターに箒をやったのは君だろう」
「はあ!?」
あまりに突拍子が無さ過ぎて、クリスはドラコの言っている事が理解できなかった。確かにクリスはニンバス2000を持て余しているが、だからと言ってなぜそれをハリーにあげなくてはならないんだろう。だが次のセリフの方がもっと理解不能だった。
「この前の飛行訓練の時、君はポッターから箒の乗り方を教わって、そしてそのおかげで初めて箒を浮かせる事に成功した。だからそのお礼にポッターにニンバスをあげたんだ、違うか!?」
「バッ…バッカじゃないか!?」
「バカとはなんだ、バカとは!あのとき確かにクリスは嬉しそうに笑ってたじゃないか。あれが僕の見間違いだって言うのか?」