第14章 【波乱の幕開け】
逆にネビルはあの夜の事を忘れたい悪夢だと思ったらしく、絶対に立ち入り禁止の部屋の事については喋らなかった。グレンジャーもやっとクリス達に愛想を尽かしてくれたのか話しかけようとする素振りすら見せず、口煩く言われない分クリス達は好きなだけ三頭犬の守っている物が何なのかを調べる事ができた。
もちろんハリーもロンもクリスも、事の発端であるドラコの仕打ちを忘れたわけではなかったが、仕掛け扉の奥の事が気になりすぎてろくに仕返しもしないまま1週間が経とうとしていた。
そんなある日の事、クリスが徹夜ついでにいつもより早い時間からハリー達と朝食をとっていると、6羽ものコノハズクが細長い包みを抱えハリーの元にやって来た。「こんな荷物を送ってくる知り合いなんていない」とハリーが訝しんで付いてきた手紙を開くと、目玉が零れ落ちるんじゃないかと言うほど瞼をかっぴらいた。
「箒だ……それも、ニンバス2000……マクゴナガル先生が送ってくれたんだ。今夜からクィディッチの練習が始まるって書いてある」
「ニィッ…ニンバス2000だって!?」
今やロンもハリーに負けじと目玉をひん剥いて、包みが焼き焦げるんじゃないかと言うほど熱烈な視線を送っている。そういえばドラコも最初クリスのニンバス2000を見たとき、同じような表情をしていたのを思い出した。
「そんなに凄いのか?その箒」
「当たり前だよ、なんて言ったってニンバスシリーズの最新作だぜ!コメットやクリーン・スイープなんて目じゃないよ。きっとマルフォイだって持ってないぞ」
ロンの言うとおり持ってはいないが、乗ったことはある。しかし当の箒の持ち主がよりによってクリスで、しかも家にお飾り同然でほっぽっているのを知ったら、この少年達はいったいどんな顔をするだろうか。無垢な眼差しでニンバス2000を見つめる彼らにその事を言うのは何だか気が引けたので、クリスは黙っている事にした。
「ハリー早く開けてみようよ……できれば僕にも触らせてくれない?」
「もちろん良いよ。あ――でもここじゃ駄目だ。『皆に見つからないように』って手紙に書いてある」
「よし、それじゃあ談話室に行こう。クリス、君はどうする?」
「私もいくよ。まだ授業が始まるまで時間があるし、読みかけの本もある」