第14章 【波乱の幕開け】
「それで何なんだろう、その荷物の中身って。いくらなんでも杖が影響を受けるほどの物なんて、そんなにあるものじゃないぞ」
クリスはガラクタ程度にしか思っていないが、グレインの屋敷には相当な数の魔法道具が揃っている。ご先祖様の残してくれた品もあれば、古美術商の父が趣味で集めた――チャンドラーは仕事だと言い張っている――品もある。その中にはかなり貴重な一品や、複雑な魔法のかけられた強い魔力を持ついわくつきのものまであるが、そんな道具に囲まれていても杖が変化を見せたことは1度としてなかった。
「よっぽど強力な魔法が込められた物か……あるいは魔法以外の力が宿っているかもしれないな」
「魔法以外?」
「前にも言っただろう、魔法と召喚術は似て非なるものだって。杖が影響を受けたならそういう可能性も考えられるって事だ」
「どっちにしても、もの凄く貴重な物か……逆にもの凄く危険な物かのどっちかだね」
「その両方だったりして」
しばらく3人で頭をひねらせていたが、約5センチ四方の小さいものだという情報しかなく、これ以上考えても埒が明かないのでその場はそれでお開きとなった。
クリスは再び忍び足でベッドに戻ると、眠らずに扉の奥に隠されている物の事を考えていた。このままの生活だけで本当に召喚術が使えるようになるとは限らない。だがクリスには最後の召喚師として、母から唯一受け継いだこの力を必ず目覚めさせねばならない責任がある。
その責任を果たす為にも、まずはあの三頭犬の守っている物が何なのか突き止めよう。きっとなにかの手助けになってくれるはずだ。
次の日からクリスは図書館に通い詰め、少しでも手がかりになりそうな情報を手に入れようと片っ端から本を読み漁った。ハリーとロンもクリスほど積極的ではないにせよ、やはり扉の奥にあるものが気になって仕方が無い様子だった。談話室であれこれと予想を立てたり、クリスが図書館から戻るたび「何か手がかりは見つかったか」と聞いたりしてきた。