第14章 【波乱の幕開け】
「実はその日、僕のお金をおろすついでにハグリッドもとある金庫から荷物を持ち出したんだ。荷物って言っても5センチくらいの小さな包みで、ハグリッドは“ホグワーツの仕事だから”って直ぐにポケットにつっこんで僕に中身を教えてくれなかった」
「それが杖とどう関係あるんだ?」
「ちょっと待っててよ……それで、その金庫っていうのが普通の金庫と違って、トンネルのもっとずっと奥の、しかも子鬼しか開けられないっていう凄く厳重な金庫だった。ハグリッドはそこから荷物を取り出したんだ、侵入者が入った、丁度その日に。そして侵入者が来たときには金庫はすでに空だった。お金目的なら他の金庫を漁ればいいのに、記事には“何も盗まれた物はない”って書いてあったんだ」
「そうか!じゃあその侵入者はきっとハグリッドが持っていった荷物を狙ってたんだ。“ホグワーツの仕事”っていうその荷物を!」
これでハグリッドが新聞の切抜きを持っていた理由も、それをハリーに見られて焦っていた理由も見事につながった。ロンは興奮のあまり椅子から立ち上がり、ハリーはどんどんと早口に推理を並び立てていった。
「ハーマイオニーがさっき言ってたじゃないか、“あの犬は何かを守ってる”って。それがハグリッドの持ち出した荷物なんだ、ここならきっとグリンゴッツ以上に安全だ!」
「そしてその荷物が保管されている場所が、あの犬がいる仕掛け扉の奥だ。そしてお金以上に侵入者が欲しがった物が、わざわざ三頭犬を置いてまで守らせている物が、私の召喚の杖が反応するほど貴重な物が――」
「――そこにあるんだ、間違いない」