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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第13章 【真夜中の冒険】


 これ以上無いというほどご機嫌に笑うピーブスに、ネビルが泣きそうな顔で訴えた。だがそれが余計にピーブスをあおらせた。ピーブスの顔はもう、相手を困らせてやる事しか考えていない表情だ。

「……やめて欲しい?」

 ピーブスにしては奇妙なほど親切な質問だったが、藁にもすがる思いでその場にいた5人全員が首を縦に振った。ピーブスはそれを見てますます顔を歪めると、嬉しさに身悶えるように体をぷるぷると震わせ大声をはり上げた。

「やっだぴょ~ん! おーーい!!生徒がベッドを抜け出してるぞ!呪文学の教室だ!!」
「逃げるぞ!!」

 ピーブスの下を滑り抜けると、教室を出てまた廊下を疾走した。体力の無いクリスはすでに限界を超えていたが、それでもなんとか走り続けた。呼吸が追いつかず、酸欠になったのか何も考えられない。道順に自信のあるクリスでも、いったい自分達がどこを走っているのか分からなかった。心臓だって爆発寸前で、足の感覚も覚束なくなってきた。
 それでも懸命に走り続けたというのに、無情にもたどり着いた先は行き止まりだった。来た道以外に道は無く、あるのはたった1つの扉だけだ、しかもその扉も鍵がかかっている。

「くそっ、開け!こん畜生ぉ!!」
「どいて!」

 力ずくで扉を開けようと、無理やり取っ手を引っつかむハリーとロンを押しのけて、グレンジャーが杖を振った。

「アロホモラ!」

 すると今まで固く閉ざされていた扉がいとも簡単に開き、5人はなだれ込む形で部屋に押し入るとしっかりと扉を閉め、廊下の様子を覗おうと耳を扉に押し付けた。

「ピーブス、ガキ共はどこへ行った?さあ言え早く!」
「口が悪いなあ。こういう時は普通“お願いします”だろう?」
「うるさい、ごちゃごちゃ言ってないで早く教えろ!」

 予想外の事に、ピーブスはからかう相手をクリス達からフィルチに乗り換えたらしい。多分ピーブスにとっては生徒が捕まろうが罰を受けようが関係なく、「単純」に怒ってムキになって反応を返してくれる相手の方が面白いのだろう。つまり扉の奥で声をひそめ、がたがた震える1年生よりも、短気な老いぼれジジイをからかった方がきっとピーブス的には満足なのだ。

「やだね、“お願いします”って言わないんなら、なーんにも言ってやらないよ」
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