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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第13章 【真夜中の冒険】


 自分の名前を呼ぶ声がしたと同時に、突然隣りの教室のドアが開き、伸びてきた2本の腕がクリスを掴むとそのまま中に引きずり込んだ。

「グ、グレンジャー!?」
「シッ、静かにしてよ。見つかったらどうするのよ!」

 静かにしろと言われても無理があった。突然皆が消えて、絶体絶命の大ピンに陥ったと思ったら、いきなり教室にひっぱられたのだ。しかも、助けてくれたのはあのグレンジャーだ。教室の中にはハリーもロンもネビルも居たが、女の子の声だったのだから間違いない。
 皆がドアに耳を当て、フィルチの足音を確かめている間、そのことが信じられないクリスは目を白黒させて呆けていた。

「足音は……しないみたいだね」
「よかったぁ」

 皆が安堵のため息を吐く中で、クリスだけは落ち着かない気持ちでグレンジャーに近づいた。ヤツに助けられたこと事体癪だが、このまま礼も言わずに貸しを作るのはもっといやだった。

「――あ、あーその、グレンジャー、さっきは……」
「なによ?……1つ言わせて頂きますけど、普段から偉そうな口をきくくらいならそれなりの事をしたらどうなの?さっきみたいに下らない事で足を引っ張られたら堪らないわ」

 前言撤回。クリスは口先まで出かけた言葉を丸ごと飲み込むと、グレンジャーの目の前で思いっきり顔をそらしてやった。
 最悪だ。ドラコにいっぱい喰わされ、フィルチに追いかけられ、グレンジャーに助けられた挙句暴言を吐かれた。ここまできたら、もうこれ以上不幸は続きようがないだろう。――しかし、その考えが甘かったと、クリスはこの後すぐに思い知る事になる。

「そっこに♪ い~るのは♪ だ~れっかな~♪」

 静寂の中からまるで歌うような口調と共に現われたのは、フィルチの次に厄介なポルターガイストのピーブスだった。にやにやと意地の悪い笑みを浮かべながら暗い教室の隅からスーッと姿を現すと、わざとらしく大げさに驚いてみせた。

「わぁ~お!誰かと思ったら、カワイイカワイイ1年生ちゃんじゃないか。こんな時間にどうして教室にいるんだ?いい子ちゃんはベッドに入ってる時間だぞ~?」
「ピーブス、黙れ!」
「おお~怖い怖い、ベッドに入らずこんなところで真夜中のお散歩なんてみんな悪い子だなぁ。――悪い子には罰が必要だよなぁ?」
「お願い、ピーブス。やめて……」
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