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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第13章 【真夜中の冒険】


すると静まり返ったトロフィー室に、廊下のほうから年老いた男の猫なで声が響いてきた。

「さぁ~、ここだよおチビちゃん。あいつの言う通りなら、ここに憎たらしいガキ共がいるはずだ。何べん鞭をふるえるか今から楽しみだねぇ」

 間違いなく、声の主はフィルチだった。ハリーはクリスの口を押えたまま鬼気迫る表情で手招きをし、他のみんなを扉まで引き寄せた。そしてタイミングを見計らいフィルチとは反対の扉から抜け出すことに成功すると、静かに、ゆっくりと、それでいて最速でトロフィー室から逃げ出した。
 と、そこまでは良かったのだが、途中の甲冑がずらりと並ぶ廊下まで来たとき、緊張と恐怖で足をもつれさせたネビルが盛大に転び甲冑をなぎ倒し、それまでの凍るように静かな廊下とは一変して、けたたましい大騒音が廊下といわずホグワーツ城全体に広がった。

「!? 何だ、今の音は!」
「……っ逃げろ!」

背後からフィルチの声が追いかけてきたが、振り返ってその姿を確認する暇も無かった。ハリー達が一目散に逃げ出す中、クリスはフィルチを少しでも足止めさせようと残った甲冑を何体か倒してさらに廊下を通りにくくすると、すぐさま皆のあとを追った。

こんな時痛感するのは己の運動神経の無さだ、こんな事ならチャンドラーの言う通り部屋に篭ってないで、もう少し外で体を動かすべきだった。しかも召喚の杖を持っている所為で余計走りにくい。おかげで一生懸命走っているのになかなかハリー達には追いつかず、後ろにいるフィルチはどんどん距離を詰めてきている。
 そしてついに曲がり角を曲がったとき、クリスは愕然とした。前を走っていたハリー達の姿が誰一人として見当たらなかったからだ。少し距離は離れていたが、確かにあとを追っていたので道は間違えていないはずだ。

「じょ……冗談だろう?」

 一人ごちたが、状況は何もかわらなかった。突如ハリー達が現われて助けてくれる訳でもないし、こうしている間にもフィルチはどんどん追いついてくる。コンマ1秒でも早く決断を下し逃げ出さなければならないのに、そう思えば思うほど頭の中は真っ白になり、足は根が生えたようにその場から動けなくなってしまった。

「どうする…どうしよう……」
「クリス!」
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