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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第13章 【真夜中の冒険】


「悪いけど僕たちもう行くよ。合言葉は『豚の鼻』だから、太った婦人が帰ってきたら――」
「嫌だよ、置いていかないで。もう一人でこんなところにいたくないよ!」
「そんなこと言ったって……」
「いいんじゃないか、連れて行っても。どうせもう4人も5人も変わらないよ、なあネビル?」

 そう言ってクリスが目を合わせた瞬間、ネビルはパッとハリーにしがみ付き、背中に隠れてしまった。お気に入りのネビルを庇ったつもりだったが、さっき後ろから襲った事でクリスに対する不信感をよけいに募らせてしまったらしい。弁解したい気持ちは山々だが、生憎今はそんな時間は無い。フィルチに見つかる前にトロフィー室に行って、とっととドラコと決着をつけるほうが先決だ。クリスは再び列の先頭を執ると、暗く静まり返った廊下を慎重に進んだ。

 そして特にフィルチや厄介なゴーストのピーブスに気取られる様子も無く、難なく――グレンジャーとネビルという予想外の出来事を抜かせば――トロフィー室までたどり着いた。談話室からのすったもんだを考えると、もう約束の時間は過ぎていてドラコ達が着いていてもいいはずなのだが、ドアに耳をそばだててみても中からは物音1つしない。恐る恐る扉を開けて部屋の中をのぞいてみても人の気配はしないし、第一グラップの巨体を隠せるほどの隙間はこの部屋には存在していないのだ。

「なんだよ、あいつら来てないじゃないか」
「ほら見なさい。あなた達マルフォイ騙されたのよ」

 フン、と鼻を鳴らすグレンジャーには腹が立つが、確かにその通りかもしれない。自ら危険を冒して夜の校内を出歩き、決闘を行うよりも、ベッドの中で眠りながら約束をすっぽかした方が遙かに安全でしかも効率がいい。小さい頃からドラコを知っていながらここまで見抜くことが出来なかった事は悔しいし情けないが、それ以上にドラコに怒りが湧いてきた。飛行訓練での態度といい、大広間での態度といい、そして極めつけのこの仕打ちといい。たまりに溜まったドラコへの怒りに煮え繰りながら、クリスは乱暴に口を開いた。

「クソッもういい、出よ…――」

 しかし言い切らない内に、今度はハリーがクリスの口を押さえ込んだ。間近で見るエメラルドグリーンの瞳が、注意深く扉の方を見張っている。突然のハリーの行動に、皆つられて息を呑むのも惜しんでいた。
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