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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第13章 【真夜中の冒険】


 クリスの言葉にハリーとロンは顔を見合わせた。入学して2週間、最近やっと迷わず大広間や各教室まで行けるようになったが、真夜中の、それも厄介なミセス・ノリスを連れたフィルチを無事に突破してトロフィー室にたどり着く自信は無い。ハリーとロンは無言で目配せしあうと、自信たっぷりに微笑むクリスに頼んだ。

「絶対に邪魔はしない?」
「友情に誓って」
「……よし、それじゃあ行こう。もうあと15分もない」
「ちょっと待ちなさいよ!」

 突然出てきたクリスの要望は聞き入れられたのに、自分の忠告は無下にされているのが相当頭にきたのか、グレンジャーはクリス達が太った婦人の穴を抜けても、後ろからついて来てガミガミと説教をたれた。

「一晩に3人もベッドから抜け出したなんて知られたら何点減点されると思ってるの?そりゃああなた達は自分達さえ良ければいいんでしょうけど、迷惑を被るのは他の一般生徒なのよ。私がせっかく変身術で点を得たのに、あなた達はそれをご破算にする気?」
「……今この時こそネサラが必要だな」
「ちょっと置いてきたのを後悔してるよ」

 グレンジャーお得意の捲くし立て攻撃に、ロンがうんざりして呟くとクリスがそれに続いた。実家にいるときはチャンドラーのお小言を右から左へ簡単に聞き流せたが、今は状況が違う。声をひそめながらも決して勢いの衰えないグレンジャーの説教は、静かな廊下に良く響き、フィルチやピーブスに聞こえやしないかと肝を冷やさせた。

「これだけ言っても分からないなら、もう好きにして頂戴。せいぜい明日家へ帰る汽車の中で私の忠告を無視した事を悔やむと良いわ。言っておきますけどもし――」

 やっとこれで開放されると安心したが、何故かグレンジャーはその先を言わずに息を呑むだけだった。ふと振り向くと『誰も描かれていない』太った婦人の肖像画の前で、グレンジャーが目を見開いて突っ立っていた。しかしどんなに見つめていても、絵の住人は出かけたまま戻ってこない。

「どうしてくれるのよ、あなた達のせいで戻れなくなったじゃない」
「知らないよ、ついて来たのは君の勝手だろ?」

 全くもってハリーの言うとおりだったが、それでグレンジャーが納得するはずがなかった。驚いた事にトロフィー室に行こうとするハリー達に追いつくと、ぴったりと後ろについてきた。
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