第12章 【ライバル】
そう言うと、満足そうに口の端だけ上げてニヤリと笑った。思い返せばネサラを呼んだ時から、クリスの様子がコンパートメントでロンを騙した時と同じく、どこか芝居がかったような妖しさだったのに、それに気づけずまんまと騙されてしまった。
「さ、これで少しは懲りただろう。そろそろ夕食の時間だ、もしかするとハリーはもう大広間にいるかもしれないな。行こうかロン」
クリスは3人を出し抜いたことにすっかり機嫌を良くしたらしく、もう怒っている様子はない。短気で怒るのが早い分、その怒りも冷めるのが随分早い。クリスはネサラを肩に乗せたまま、鼻歌交じりに談話室を出て行き、ロンもしぶしぶそれに続いた。
気が抜けたフレッドとジョージはソファーに深々と身を沈め、同時に気を落ち着けるように長いため息を一つ吐くと、フレッドがジョージに小さく話しかけた。
「“少しは懲りた”か?」
「まさか。むしろ――」
「「 この借りは必ず返させてもらうぜ!!」」
クリスも一筋縄ではいかないが、この双子もたった1回懲らしめただけで大人しくなる性分ではない。むしろ相手が手ごわいほど燃えてくる。不敵な笑みをたたえて、フレッドとジョージはガシッと熱い握手を交わした。
* * *
「ロン、クリス、こっちだよ」
大広間に入ると、案の定すでにハリーが席についていて、クリス達に気づくとはにかみながら手招きした。その姿はとても退学宣告を受けたようには見えず、むしろ緩む頬を必死に隠し、そわそわと体を動かしていた。
「サプライズだ、何があったと思う?」
「ドラコが退学になった」
「違うよ――それも良いけどさ――実は僕、クィディッチの代表選手に選ばれたんだ」
「まさか!?だって1年生は選手になれないんだろ?」
「マクゴナガル先生が特別に措置を取ってくれたんだ。あの後キャプテンのウッドって言う人の所に連れて行って、飛行訓練の事を説明したら、僕をぜひチームに入れたいって」
談話室にいた時とは180度変わり、ロンのため息症候群は綺麗さっぱり消えて、興奮してハリーの背中をバシバシ叩いて喜んだ。それとは逆にクリスははしゃぐ男の子2人を尻目に、不満のため息を吐いた。