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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第12章 【ライバル】


 クリスがそう言って再び体に力を入れると、ジョージとフレッドはとっさに前かがみの体勢を取った。しかし、彼女が狙っていたのは2人の足のスネだった。
 がら空きのスネ目掛けてかかとで蹴り上げると、その痛みにジョージとフレッドの腕が離れた。クリスはつかさずスルリと彼らの拘束から抜け出すと、談話室の窓を開け、左人差し指を咥えると空に向かって指笛を吹いた。
 眼にほんのり涙を浮かべながら、ウィーズリー兄弟はこのクリスの不思議な行動を呆けた顔で見つめていた。だが、夕暮れの太陽を背に徐々に近づいてくる黒い点の正体が何だか判ると、どんどんと顔が引きつっていった。

「さあネサラ、どの阿呆の目玉からいこうか?」

 使い魔のネサラを腕に止まらせると、クリスは3人の顔を見て微笑んだ。睨まれている時よりも顔は穏やかなはずなのに、夕日を纏う彼女の姿が恐ろしいのは下手に整った容姿と、逆光の魅せる雰囲気の所為だろう。兄弟達は自分の生唾を飲み込む音がハッキリと聞こえた。
 ロンはすでに列車の中で、人間3人相手でも全く歯が立たないほどネサラが強いのを目の当たりにしている。下手に喋ってこれ以上クリスとネサラを刺激しないよう努めたが、何も知らない双子は只ならぬ様子の彼女に緊張しながらも、上ずった声で喋りだしてしまった。

「クリス、まずは落ち着いて話しを――」
「なるほど、まずはフレッドからお望みらしい」
「違うよ僕はジョージだ……って今はそんな事どうでもいい!だから」
「行けっ、ネサラ!」
「うわああぁぁぁっっ!!―――あ、あぁ???」

 ネサラはクリスの言う通り、真っ直ぐジョージ目がけて飛んでいった。が、頭上を2・3回旋回しただけで特に何もせず、そのままスーッとクリスの腕にまた戻って行ってしまった。訳が分からずキョトンとした表情でクリスを見返すと、クリスがおなかを抱えて震えていた。

「っくくく……ははは、情けないな。たかが鳥1匹相手に大声上げて。それでも“男”か?2人は“ユーモア”を磨く前に少しは“男らしさ”を磨いたらどうだ」
「あっ!クリスもしかして、また――」
「ご明察。中々の名演技だっただろ?」
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