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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第12章 【ライバル】


「おおぉ、申し訳ないクリス嬢。我らの愚弟の所為でお気を悪くさせてしまいました」
「そればかりか、美しい眉間にシワまで寄せさせてしまって……かくなる上は鞭打ち、獄門、逆さ磔に処してやって下さい」
「もういい分かった、私の負けだ。だからその喋り方を止めてくれないか、虫唾が走る」

 よりによってフレッドとジョージの鳥肌の立つようなご機嫌とりは、よくパーティーで会う大人達がする、クリスの大嫌いなおべっかによく似ていた。卒業するまでずっとこの責め苦を味わうよりは、少し癪だがここで降参した方が何倍もマシというものである。
 それを聞いたフレッドとジョージは互いに顔を見合わせると、「してやったり」といった表情で鏡のように左右対称にニヤリと笑った。

「まあ、本人にそう言われちゃあ、仕方ないな」
「そうだな。あ、クリスもっとつめてくれ。1人でソファーを陣取るなよ」

 つい先ほどまで嫌みったらしいほど下手に出ていたのに、自分達が勝ったと分かったとたんにこの態度。まんまと一杯食わされたと、簡単に許してしまった自分に少し自分に嫌気が差した。フレッドとジョージは笑顔を崩さぬまま、クリスを挟むように左右に腰掛けた。

「それで、本当なのか?」
「何が?」
「とぼけるなよ、ドラコ・マルフォイと婚約してるという話しだ」
「何で――!?」

 そこまで言いかけたとき、すぐにロンという弟の存在が頭を過ぎった。向かいの肘掛け椅子に座るロンを無言で睨みつけると、驚いた表情で首を左右に振った。

「チッチッチッ、クリス。君はロンを疑っているようだが……違うんだなぁ」
「そう。僕達がちょ~ど1時間前に外で薬草学の授業を受けていたら……たまたま聞こえちゃったわけさ。君と他の女の子が、お上品にお喋りしていた会話が。――ついでに言うと、多分僕らだけでなく他の教室にも聞こえてただろうな、あれは」
「…最っ悪だ……」

クリスは思わず頭を抱えた。自分の浅はかさがこれほど嫌になったことはない。明日からは卑下た好奇心と下衆な妄想や噂話の餌食になるかと思うと、頭が痛い。そして何より『マルフォイの許婚』として周囲から認識されるなんて耐えられない。
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