第12章 【ライバル】
「そんなの絶対に上手く行きっこないって、あまりにも安直すぎるよ。もしマルフォイがハリーだけを退学にさせるように仕向けたらどうするんだよ?」
「大丈夫、意地は悪いがそこまで悪党じゃないよ。マルフォイ家の人は」
「これだもんなぁ……そりゃあ相手が君なら上手く行くかもしれないけどさ、ハリー相手にその作戦は無理があるよ」
呆れたように手をあげて、ロンは何回目か分からないため息を吐いた。
「ハリーが本当に退学になるようだったら、もうとっくに荷物をまとめに寮に戻っているはずだ。でもハリーはまだ戻っていないだろう?きっと今頃マクゴナガル先生の部屋で書き取りの罰でも受けてるんだよ」
「そうだといいけど……」
そう言ってロンはまたため息を吐いた。談話室はロンのため息が充満している。もう彼のため息症候群を止めるには、ハリーの無事な姿を見せるしか術はないらしい。
丁度その時、肖像画が開いたので、ロンもクリスもハリーが帰ってきたと思って顔を輝かせた。しかし穴の縁から現れたのはクシャクシャの黒髪ではなく、燃えるような真っ赤な髪だった。
「なんだ……フレッドとジョージか」
「なんだとは何だ、お兄様に向かって。おおっと、これはクリス嬢。ご機嫌麗しゅう?」
クリスはまだ2人の見分けが付かないので、フレッドだかジョージだか分からないが、とにかく双子の片方がクリスに向かってわざとらしい挨拶をすると、もう片方も同じように紳士きどりで帽子を脱ぐしぐさをした。歓迎会の時にクリスの怒りを買って以来、2人はクリスをお嬢様と呼んではふざけた態度で接し、心にもないお世辞を言うので、余計にクリスの怒りを募らせていた。
「その喋り方、止めてくれないか?」
「ほら見ろロン!お前が汚い言葉を使ったから、お嬢様がお怒りになってしまったじゃないか!」
「なんで僕のせいなんだよ!僕じゃなくってジョージだろ!?」
しかも怒って何度注意しようとも、ことあるごとに責任をロンに押し付けて全く聞く耳を持たない。まさに暖簾に腕押し状態だ。ジョージはロンの訴えを無視し、今回もまたそ知らぬ顔でクリスに深々と頭をさげたが、それもやはり芝居がかっていた。