第12章 【ライバル】
ソファーに堂々と足を伸ばし、手元のテーブルにミルクティを携えて読書をするのはクリスのお気に入りのスタイルだ。万が一チャンドラーに見つかってしまうと行儀が悪いと小1時間は説教をくらうが、ここはホグワーツだ。チャンドラーのいるグレイン家の屋敷からは遠く離れた距離にある。だから本当なら、クリスは悠々と読書を楽しんでいるはずだった。だが――
「……退学、ハリーが退学――でもそれならマルフォイのヤツだって……でも相手はマルフォイだしなぁ……どう考えても信用できないし――」
ぶつぶつと呟きながらクリスの目の前を往ったり来たりするロンに気が散って、とても読書に集中できる状況ではなかった。読んでいた本から目を離すと、クリスは呆れたようにため息を吐いた。これでロンに注意するのはもう4回目だ。
「いい加減落ち着いたらどうだ?そんなに心配しなくても、たかがちょっと箒に乗ったくらいで退学になんてならないよ」
「だってマクゴナガルがハリーを連れて行ってもう1時間になるんだぜ?どうしてクリスはそんなに落ち着いていられるんだよ」
「だから言っただろう?もしハリーが退学になるようならドラコを突き出せばいいって」
この作戦はすでに1時間前にロンに提案したが、ロンには信用されていなかった。なぜならこの作戦を信用するという事は、『マルフォイ』を信用しなければならないからだ。
その内容とはこうだった。――もし本当にハリーが退学を告げられたのなら、ドラコをマクゴナガルの部屋までしょっ引いて、コイツも箒に乗っていたと証言してやればいい。幸いグリフィンドールとスリザリンの1年生全員が目撃しているので、証人は沢山いる。
すると当然、ドラコは我が身可愛さに父親に助けを求め、学校の理事であるマルフォイ氏は絶対に息子を助けるために校長に掛け合うだろう。しかし学校側としては同じ罪を犯した生徒を、片方は退学にし、片方は在校させるなどとそんな不条理なことが出来るわけはない。
そして結局、公平を期すため両者とも軽い処罰だけで退学放免、というわけだ。――しかしこの案を聞いた時、ロンはため息を吐きながら「クリスって凄く楽観的だよね」と言った。