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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第11章 【刺激的な授業】


 とっさにマダム・フーチが怒鳴ったが、ネビルには聞こえているように見えなかった。ネビルの箒は不安定にぐらつき、たまに上下左右に揺さぶりをかけている。それにふり落とされまいと、ネビルは必死に箒にしがみ付いていた。そしてその間にも、ネビルはまるで空気の抜けた風船のように無茶苦茶な軌道を描きながら上昇していった。

 止むを得ず、マダム・フーチが箒に跨り後を追ったが、暴れ馬のようにがむしゃらに動く箒に思う様に近づけず苦戦していた。そしてついに力尽きたネビルが、マダム・フーチの目の前で、そしてクリス達生徒の目の前で、箒から振り落とされてしまった――。

 地上からは耳をつんざくような悲鳴が上がった。マダム・フーチがとっさに追いかけたが、駄目だった。ネビルはクリス達から10数メートル離れた草の上に鈍い音を立てて倒れこみ、ぐったりとしている。――もしかして、と最悪の予感がクリスの頭をよぎり、体中の血が一気につま先まで下がった気がした。
 マダム・フーチがネビルの傍に降り立ち、抱き起こした。幸い命に別状はないらしいが、10メートル近い高さから落ちたのだ、無傷であるはずがない。マダム・フーチは生徒達にもし箒に触れたら退学だとキツク言いつけると、痛みと恐怖で呻き泣くネビルを抱え、医務室へと急いだ。

「見たか、あいつの情けない顔!まぬけにも程があるだろう!?」

 マダム・フーチが完全に見えなくなったのを確認すると、ドラコが大声で笑い出し、他のスリザリン生もそれをきっかけに一斉にはやし立てた。クリスはつま先まで下がった血が、今度は一気に頭に昇るのを感じた。

「止めなさいよマルフォイ、ネビルは大怪我をしたのよ!?」

 パーバティが果敢にも食って掛かると、ドラコの傍にいた犬顔で気の強そうな女が傲慢な態度で前に進み出た。

「あぁ~らパーバティったら、ロングボトムを庇うなんて。……もしかしてあいつに気があるの?」
「ちっ違うよ!私はただ――」

 顔を真っ赤にしてうろたえながらも、なお言い返そうとするパーバティを庇うようにして今度はクリスが前に出た。すると犬顔の女は一瞬だけ面喰らった表情をしたが、すぐに小馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
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