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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第11章 【刺激的な授業】


 ここまできたら、もうあとは奇跡に頼るしかない。クリスは覚悟を決めると、手をかざして力いっぱい叫んだ。

「上がれ!」

 だが、クリスの足元に鎮座する箒はピクリとも動こうとしない。今度は意識を極力箒に集中させ、軽く目を閉じて念を込めながら唸った。

「上ぁ~がぁ~れぇ~」

 ゆっくりとまぶたを開いて見てみるが、足元の箒はコロリと転がった様子すらない。

「……ね? あがって?」

 似合わないどころの話じゃなく、トロールでさえ鳥肌を立てるほど可愛くお願いしてみたが、それでも箒は動かなかった。とたんに襲ってくる恥ずかしさと後悔の念に、クリスは己の顔が熱をもってくるのを感じた。

「……っ…くっ、ぷはは――僕、どうして君がクィディッチ嫌いなのかようやく分かったよ」
「うっ、煩いっ!」

 最悪な事に、ロンにクリスが箒相手に手間取り、挙句の果てに不気味におねだりしている様子までバッチリ見られてしまったらしい。顔が裂けんばかりに口を左右に広げ、必至に笑い声をこらえているロンを怒鳴りつけると、今度は自分の箒を睨んだ。

「上がれ、上がれっ、上がれったら!いい加減に上がらないとへし折って暖炉に放り込むぞ!!」

 地団駄を踏みながら箒を脅しても、箒はまるでストライキを決め込んだように何の反応も示さなかった。いい加減頭にきて、本当にへし折ってやろうと箒を振り上げると、ハリーが慌てて止めに入った。

「待った待ったクリス、ヤケになっちゃまずいよ。コツがあるんだ、まずは気持ちを落ち着けて『本当に箒に乗りたい』って思ってごらん」

 例え相手がハリーだろうが他人に指図されるのはどうも癪に障るが、他にすがる術もないし、悔しい事にハリーはすでに箒を手にする事に成功していた。クリスはふて腐れた顔だったが、藁にもすがる思い出言われたとおりに試してみた。

(――乗りたい、乗りたい、箒に乗って大空を飛びたい!)
 
 するとゆっくりとだが、箒が上昇し、クリスの手の中に納まった。掴むには丁度いい太さの木の柄が、微かだが不安定に手の中で揺れている。少しでも心を乱すと、すぐまた地面に倒れてしまいそうだ。
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