第11章 【刺激的な授業】
昨夜出された天体学の宿題をやりながら、クリスは適当にいなした。クィディッチについて弁論を交わすよりも、天文学の宿題を終わらせる方がクリスには何倍も大切な事だった。
だがロンとしては宿題よりもこの論争の方が大切らしい。涼しい顔で羊皮紙に向かうクリスに、さらに食って掛かってきたが、クリスはろくに話しを聞こうともしなかった。
「ロンが何を言おうと世間にどう評価されようと、何百回だって言ってやる。『私はクィディッチが大っ嫌いだ!』分かったら易々と私の前でクィディッチの話しをしないで貰いたいな」
怒ったクリスは荷物をまとめると、まだ9時前だというのにさっさと女子寮に引き上げた。
気が付けばもう飛行訓練は明日に迫っている。あんだけ言ってしまって、実は飛べない事が知られたらきっと皆に笑われる。そして他の生徒が自由に空を飛ぶのを、自分は地上から眺めなることになるのだ。そう考えただけで、焦りと苛立ちが重く圧し掛かってきた。少し前まで暇だ暇だと愚痴ってはいたが、だからといってこんな刺激は望んじゃいない。
クリスはベッドにもぐりこんで、明日一日をどう乗り切ろうかと考えをめぐらせた。仮病を使おうか、奇跡に頼るか、それとも夜中にこっそり起きて少しでも練習しようか。そうこう考えをめぐらせている内に、クリスはいつの間にか眠りについてしまっていた――。