第1章 影山夢01
…私と飛雄くんは3歳年の離れた幼馴染みで、親同士が仲良かったから小さい頃は一緒によく遊んだ間柄だった。
だけど大きくなるにつれて遊ぶことが減って、会話も減って、関わりもほとんど無くなっていた……ある日。
飛雄くんのお母さんが、私が教育学部に通ってるとうちのお母さんから聞いて、飛雄くんに勉強を教えてやって欲しいと頼まれたことからまたこうして会うようになった。
最初は何となくよそよそしく敬語なんて使ってたけど、段々昔の感じを思い出してきたようで今ではタメ口だ。
ちょっと生意気だけど………懐かしいから良しとしてる。
「…なぁ、おい、柚季、聞いてんの?」
「っと、ごめん。なぁに?」
「……今日、7時には帰るって言ってたよな?」
言われて時計を見ると、もうそろそろ7時だ。
「わ、気付いてなかった!教えてくれてありがと、飛雄くん!今日はこれからバイトなんだよねぇ…。」
「バイト?何の?」
「コンビニだよ、駅前の。」
「…………何でちょっと遠いとこにしたんだよ。」
「大学からの帰りだと楽だから……どしたの?何か飛雄くん機嫌悪い?」
昔から機嫌が悪くなると、眉間に皺が寄って目付きがかなり悪くなるから分かりやすい。
じっと目を見て言うと、飛雄くんはそのままの顔のまま、私の腕をぎゅっと掴んだ。
「………せめて、帰りが遅くなる時間やめろよ。何かあったらどうすんだよ。」
「…もしかして、心配してくれてるの?」
「当たり前だろっ!!好きな奴が遅くにバイトしてるなんて心配しないわけ無いじゃねぇか!」
「え」
「…あ」