第3章 磨励自彊ー2日目ー
「皆さん、夕食出来たので食堂に来てくださいね」
体育館の扉が開いて武田先生が顔を出した。
そこで、マネージャーの仕事をしていなかったことに気付いた。完全に夕食の支度を他の3人に任せてしまっていたのであった。
「武田先生!すみません任せちゃって!」
「いえいえ大丈夫です。今日は色々とあってお疲れでしょう」
「いやまだ平気です!私もお手伝いします」
「ではお願いしますね。行きましょうか」
任せてしまって申し訳ない気持ちとここから逃げ出したい一心で武田先生の方に走る。相変わらず優しい武田先生に癒されながら食堂へと向かった。
食堂に着けば、支度をしてくれている潔子ちゃんと仁花ちゃんにも謝ってから髪を束ねてエプロンを着けて配膳を手伝う。
暫くすれば体育館の片付けが終わったのか部員たちが続々と食堂に入ってきたのでみんなに取り分けてあげた。
「ねえ京香さん。やけにピリピリしてるけど何かあったの?」
「あー…うん。全国優勝するのは俺たちだって両校が睨み合っちゃって」
「京香さんを連れて行くのは俺たちだっていうことね」
「なっ…!」
いち早くこの雰囲気に気付いた潔子ちゃんは流石である。私が言わないとこまで察してしまうのは女子のカンとも言うべきか。あっているでしょ?という表情に私は頷くことしか出来なかった。
部員たちのおかわりを受け取りながら、そのまま私たちもご飯を食べて食器を片付ける。今日は私がお風呂の掃除してくると言えば、食堂を任せ浴室に向かった。
流石に合宿所の浴室は広い。ジャージを膝辺りまで捲り上げてから掃除を開始する。デッキブラシで浴槽と洗い場をゴシゴシとしてから泡を流そうとお湯を出した。
ーーその時である。
蛇口からお湯が出るものとばかり思っていたのだが、シャワーから勢いよくお湯が噴き出せば見事に頭から濡れてしまって全身びしょ濡れに。
「うーわ最悪…」
慌てて蛇口から出るように捻るものの、Tシャツは肌に張り付いて気持ち悪い。髪からは水が滴っている。とりあえずみんながお風呂に入れるようにしないとと思えば、今度はしっかりとシャワーを握ってからお湯を出し、泡を流していく。そして浴槽にお湯を張れば軽くTシャツを絞ってから着替えるためにキョロキョロとしながら早足で部屋へ。
どうか誰にも会いませんようにと願いながら。