第8章 奮励努力ーsugawaraー
「「わっるい顔…」」
どちらとも無く漏れた言葉に顔を見合わせて吹き出す。
奇襲攻撃になるからこそ、早々に手の内を見せてはいけない。
同時多発位置差攻撃オールは諸刃の剣。
コート内の全員がスパイクモーションに入ることになるので、ブロックされた時のフォローに入れない。
きっとあの子は…ブロックしてしまうのだろうけど…でも、研究する時間を与えてはいけない。出来るならば、あの子たちとあたるまでは隠しておきたい。
しかし、私の考えを口にしなくても既にしっかりと孝支くんに伝わっていたようだ。孝支くんの表情は自信とやる気に満ち溢れていた。
「そのやる気を勉強にも使うんだよ?ほらあと少し!」
「…よーし!やるべ!」
気合を入れた孝支くんは凄く輝いて見えて、純粋に素敵だなって思った。私で力になるのなら出来ること何でもしてあげたい。
バレーでも、勉強でも…私を頼ってくれるのなら全力で応えてあげたい。
「あー、終わった…!京香さんのおかげで何とかなりそう。ありがとうございました」
「良かった…実を言うと私で教えてあげられるか心配だったんだけど、やっぱ孝支くん頭いいんだよ」
「いや、京香さんの教え方が上手だからだよ」
相変わらず孝支くんは褒めるのが上手だ。ついつい私がその気になってしまうようなことを言ってくれる。
ありがとうと言って、孝支くんが勉強道具を片付けているのを見ていると時計の針が18時を回っていることに気付いて驚いた。
孝支くんはまだ高校生。親御さんが心配しているかもしれない。
「ごめんね!孝支くん!こんな時間になっちゃった…駅まで送るから!」
「え、いいって!京香さん帰り一人で歩かせるの心配だし…普段の部活終わりとかもっと遅かったりするし」
「よくない!この辺の土地勘ないだろうし何かあったら嫌だから…」
反論は認めません!って強めに言えば渋々頷いてくれた孝支くん。駅までお願いしますと律儀に言ってくれた彼に満足すれば、任せなさいと言って笑い合う。