第3章 磨励自彊ー2日目ー
その激痛に耐え切れなくて私は意識を無くした。
目が覚めると病室だった。
足は固定されていて、医者から暫く安静だって告げられた。
リコとの約束の為に一刻も早くバレーに復帰しないとなのに。
私は焦ってた。それが裏目に出たんだろうって…
そんな時にね、新しいリハビリの療法士さんを紹介されたの。
まだ若いお姉さんで、忽ち仲良くなった。
細かい目標を作ってくれて、やり過ぎないようにブレーキをかけてくれたり。その人とリハビリするようになって少しずつだけど着実に運動出来るようになっていったの。
でもね、私の足は運動出来ても10分間が限界。
とてもバレーの試合に出れるようなものじゃなかった。
選手としてはもうやれない、動けない自分を見るのは嫌でやりたくない。しかしリコとの約束は果たしたい。どうしたら良いのかわからなかった。
「京香。身体はどうだ」
「若利…うん、大丈夫。でも私、もうバレーやりたくない…」
「…そうか。これからはどうするんだ」
「どうしよ。何も決めてない…バレー辞めるから高校は白鳥沢じゃないとこ行こうかな。結局、白鳥沢に居たの一年もなかったね。ごめん折角若利が薦めてくれたのに」
「何故白鳥沢を辞める必要がある。お前の才能は選手だけじゃないだろう。的確な判断力がある、それを白鳥沢の為に使え」
お見舞いに来てくれた若利の言葉の意味がわからなかった。
当時の私は選手としての自分しか考えてなかったから。
黙ってる私に若利は不思議そうな顔をしてから言葉を続けた。
「お前のその才能と能力は白鳥沢を強くする。男子バレー部のマネージャーになれ」
「…私が、マネージャー?」
「そうだ。良い才能は豊かな土地で培われるべきだ」
「ふふ、若利って本当に中1なのかな。わかった、私マネージャーになる。白鳥沢の為に働く。若利、ありがとう」
私にマネージャーの道を示してくれたのは若利だった。その手があったか!って小さな希望になった。
ふふ、驚いたでしょ。若利は無愛想だけどとっても優しいのよ?
それで私は退院して、男子バレー部のマネージャーになった。
中学時代はほんの僅かな時間だったけど…
高校生になって、先輩たちにアドバイスするようになって、私が"勝利の女神様"なんて呼ばれ始めて…そんな大層な奴じゃないの。私はまだ、大切なリコとの約束を果たせてないから…