第3章 磨励自彊ー2日目ー
その知らせがきたのは、その日から数日後。
私が再び走ることが出来た日。
その日は珍しくリコがリハビリ室に姿を見せなかった。
ずっと頑張ってきたから疲れたのかもしれないと私は1人リハビリを頑張った。
ほんの数メートルだけだけど駆け出すことが出来たの。
それが嬉しくて嬉しくて、早くリコに伝えなきゃって病室に向かった。
近くまで来るとね、看護師さんや医者がバタバタしてて何かあったのかと不安になった。
「京香!梨香は?梨香はどうなの…!」
「お母さん?そんなに慌ててどうしたの…リコに何かあったの?」
名前を呼ばれて振り返れば、顔面蒼白のお母さん。
リコに何かあったんだと血の気が引いた。
「お母さん、京香さん。懸命な処置を施しましたが梨香さんは…」
「…え?ちょっと待ってよ先生、昨日までリコ元気だったんだよ!冗談でしょ…リコは昨日だって私と一緒に…!」
容態が急変したのだという。事故の時に胸を強く打った為、心臓に血栓が出来ていたそう。薬や点滴で治していたのだが、今朝心筋梗塞をおこして、そのまま……
病室に入るとリコは眠ってた。
そうなの、眠ってたの。朝だよって言えばおはようお姉ちゃんって目を覚ましてくれるんじゃないかって、私は何度も身体を揺らした。
「リコ…?いつまで寝てるの?今日リハビリしてないじゃない、私少し走れるようになったんだよ?ねえ、バレーするって言ったじゃない!リコ、目を覚ましてよ!リコ!」
お母さんは泣き崩れてた。
私も動かないリコを抱き締めて泣きじゃくった。
何で神様は意地悪するんだろうって恨んだ。
何で私じゃなくてみんなあの子なのって…
結局、私はあの子の全てを奪ってしまったの。
夢も将来も…命さえも。
「お姉ちゃん、これから何があってもバレーからは離れないでいてくれる?」
ふと聞こえてくるはずのないリコのあの日の言葉が聞こえてきた。
リコを見るけどやはり目は開かないまま。
自分を責めてる私を、リコは救ってくれようとしてる。
何故だか私はそう思ったの。
リコの分まで私が生きる。色んなこと経験して、必ず頂きの景色に辿り着く。
リハビリを文字通り倒れるまでやって、漸く3分走れるようになった。まだまだ頑張らないとバレーは出来ない、制止を聞かずにリハビリを続けた矢先、両脚に激痛が走って私は倒れ込んだ。