第3章 磨励自彊ー2日目ー
「リコ、ごめ…っ…ごめんね…」
「もういいよお姉ちゃん。私は大丈夫だから」
子供のように泣きながらやっとリコに謝ることが出来た。
どっちが姉だかわからないよね、ずっとリコは私が落ち着くまで手を握っててくれた。
「お姉ちゃん、私ね、バレーが嫌いだって言ったけどやっぱり好き。だから私でも出来るバレーやろうかなって思ってるの」
「リコでも出来るバレー…?」
「そう、シッティングバレーって言ってね。座ったままでするバレー。早く元気になってやるの!」
「そんなのあるんだ…そっか、リコ頑張って」
「頑張って?何言ってんの!お姉ちゃんは早く歩けるようになってバレーするの!お姉ちゃんからバレーとったら何が残るの」
歩けるようになってバレーを?スポーツは無理だって言われたのに?…戸惑いのあまり言葉に詰まるとリコは微笑んだ。
「お姉ちゃんのバレーへの執念と努力なら必ず出来る。私が一番側で見てたもん、今までの努力以上の努力が必要になるだろうけど、お姉ちゃんなら大丈夫だよ」
リコは私の心の支えだった。
身体を動かせるようになってからはリハビリを開始。
いつもリハビリはリコと一緒にお互いを励まし合いながらやった。
庭に出れるようになってからは、オーバーとアンダーのパス練習したり、一緒にバレーの試合のテレビやDVD見たり。
「お姉ちゃん、これから何があってもバレーからは離れないでいてくれる?私ね、バレーしてるお姉ちゃんが好きなの。それだけじゃない、お姉ちゃんとバレーすることも好き。若利は…あんまり好きじゃないけど」
「ふふ、何それ。退院したらさ、またバレーしよう。私がリコを連れて行ってあげる!頂きの景色に」
「本当?じゃあ約束。でもお姉ちゃん無理しないで」
「うん、わかった。それも約束」
いきなり言い出したリコの言葉をあまり深く考えていなかった私は、このまま退院して、バレーをしてあの子を頂きの景色に連れて行くことに疑問は感じなかった。
でも今思えば、あの子は何かを悟っていたのかもしれない。
また私は、気付いてあげることが出来なかったんだ。