第3章 磨励自彊ー2日目ー
私が目を覚ますと一面真っ白い部屋、消毒の匂いに病院だってすぐにわかった。少し記憶が曖昧になっていて、何でここに居るんだろうって考えてるとお母さんが私の姿を見るなり泣いて。
私はどうしたのかって聞くと、リコと2人で車に轢かれて5日間も目を覚まさなかったらしい。そこで記憶がハッキリした、リコは!あの子はってベッドから起き上がろうとしたんだけど身体が全く動かなくて。
私は轢かれたことで全身を強打。足が動かなくなるかもしれないって医者に言われた。日常生活は出来てもスポーツは無理だろうって。これは私への罰だって思った、自分のことばかり考えて大事な事に気付かなかった罰。
「梨香さんは両脚が麻痺しています。お二人共、命に別状がなかったのが奇跡です」
医者から言われた言葉に頭が真っ白になった。
私のせいでリコを事故に巻き込んで、私を庇ったせいであの子の足は動かなくなった。こんな私、死ねば良かったのに。何度も何度も自分を責めた。
それから数日経って、誰かが病室のドアをノックした。返事をしないままで居ると、遠慮がちにドアが開いた。
「…お姉ちゃん、入るよ?」
その声に吃驚した。間違うはずもない、リコの声だ。謝らなきゃいけないのに、どんな顔して会えば良いのかわからなくて顔を背けさせることしか出来なかった。
「梨香ちゃん、また後で迎えに来るわね」
「はい、連れてきてくれてありがとうございます」
ベッドの隣にリコが来たようだ。看護師だろう、車椅子を押してきてくれた女性はそっと病室から出て行った。
言わなきゃ、ごめんねって。
こんな私が姉でごめんねって…
しかし、焦る気持ちとは裏腹に言葉にはならなかった。
「お姉ちゃんが目を覚ましたって聞いて安心した。本当良かった」
「……」
「私ね、少しずつだけど1人で車椅子乗れるように頑張ってるの。この病院の庭広いんだよ」
「な、んで…?何で私を責めないの…私のせいでリコは!」
「…お姉ちゃん、もう十分自分のこと責めたでしょ?私まで責めたらお姉ちゃん壊れちゃうよ。…そりゃね、ショックだったよ。もう歩けないって聞かされた時は。でも私たち生きてるから、助かったんだから…前向かなきゃ」
その言葉に何も言えなかった。
そっと手が伸びてきて、ギュッと手を握られればずっと堪えてた涙が一気に溢れて私は泣きじゃくった。