第1章 合縁奇縁
烏野高校バレー部を覗きに行こう。
そう決心してから早数ヶ月。
大学の部活関係の雑用、大会、練習試合、大学の授業等忙しかった私はなかなか足を運べない日々を過ごしていた。
8月も終わり頃、やっと数日暇を作ることが出来たのでスマホを片手に午前中のうちに家を出た。
もし、練習にでも参加をと言ってくれた時用にバレーシューズと運動が出来るようなジャージをバッグへと入れて、Tシャツにジーンズというなんともラフな格好で電車に乗った。
「いきなり知らない奴が行って参加させてくれるわけないか・・・」
夏休みのためか電車はすいていて、空いている席に座ってバッグに視線を落としてぽつりと零した。
まあ今日はどんな感じか見ておきたいだけだし、期待外れならそのまま帰って白鳥沢の練習に混ぜてもらおうなんて思えば、降りる駅を間違わないように何度も確認した。
自宅の最寄り駅から烏野の最寄り駅までは案外と近かった。
疲れからかうとうととしそうになったものの、車内アナウンスで降りる駅名を耳にすれば頭を軽く振って眠気を飛ばす。
乗り過ごさないで良かった・・・
無事に目的の駅に着けば一人安堵の息をひとつ。
ここからどうやって行くのかわからない為、地図のアプリを起動すれば地図と周りを確かめるように何度も見直す。
生憎私は方向音痴ではないため、地図があれば大抵目的地にはたどり着くことが出来る。
可愛らしい女の子ならば、道に迷ってかっこいい男子に助けてもらって恋が芽生える・・・
なんてこともあるだろうが、私にはまずありえないのであった。
一度でいいからそんな出会いしてみたいねぇ・・・
自分で言っておきながら苦笑しつつ、烏野高校へと向かっていった。
駅から歩いて数十分。
ようやく目的の烏野高校へたどり着いたらしい。
校門に書かれてある学校名を確認すれば、暑さでじんわりとかいた汗をタオルで拭ってから敷地内へと足を踏み入れた。
白鳥沢学園に慣れているせいか、少し狭く感じた。
私立と公立の差か・・・
などと物珍しそうにキョロキョロとしながら体育館を探す。
暫く歩いていると、何やらボールの音とシューズの音が聞こえてきて、自然と私は口元を緩ませた。
一応部外者のため、堂々と入ることも出来ないしどうしようかなと思いとりあえず窓から体育館を覗くことにした。