第1章 合縁奇縁
「ねえ若利、私"勝利の女神様"だって・・・笑っちゃうよね」
「あながち間違ってもいないだろう。白鳥沢が常連になれているのは京香の力があってこそだ。これからも俺の為に力を使え」
「はいはい、若利のため、白鳥沢のために頑張るよ」
とある休日、若利の家へ遊びに行った時に見つけた月間バリボー。
何気なくペラペラとページをめくっていれば、「白鳥沢学園を全国大会常連へと押し上げたのは"勝利の女神様"が居たからだった!」という記事を見つけて驚いた。
もちろん名前等は言っていない為、記事には載っていないのだが正直言って恥ずかしかった。
でも、若利が認めてくれたことが嬉しかった。
性別は違うけれど、小さい頃から天才と呼ばれバレーに関して尊敬できる人物。
相変わらず自分にしか興味のない発言はちょっといただけないけれど。
それからというものの、「白鳥沢に"勝利の女神様"あり」という噂は瞬く間に高校バレー部に広がった。
――それが、いちマネージャーである私が"勝利の女神様"と呼ばれる所以である。
「私の力って・・・前々から覚には言ってるじゃない。覚は私と同じような直感を持ってる。先を読む力がある。だからそれを伸ばしなさい。もっと相手の動きを読むの。何度も言ってるでしょう」
「わかってるけど、俺は若利君とは違ってストイックにはなれないの」
「・・・覚あんたね、私が何を言ったって本人が実際にやらなければ意味はないでしょう!もういい加減にしなさいよ!」
へいへい、と返事をしながらコートへ戻っていく覚の後姿を見ながらため息をひとつ。
女神様の力なんてないに等しい。
その指摘されたとこを自分でどうするのかが大事なのはわかっているはずなのに・・・。
しかし、若利が3年となった今の白鳥沢は本当に強い。
セッターの二人も若利のことを引き立ててくれている。
鷲匠監督の理想とするチームが完成してきているのだということがよくわかる。
「高校生に負けてなんかいられないよね!」
視線を我が部員たちへと向ければ、気合を入れる。
次のセット落としたらペナルティねー!
なんて叫べば嫌そうな声が上がるも、高校生たちのいい練習相手になるだろうと頬を緩ませる。
なんだかんだ言っても結局は白鳥沢が好き。
――でも、ライバルって必要だよね?若利。