第3章 磨励自彊ー2日目ー
その不機嫌なオーラの発生源はすぐにわかった。飛雄君だ。
確かにトス上げてもらうのは孝支君に頼んだし、今日飛雄君と全然話してないけども…!
俺の気持ちわかってんすよね…ていう顔しないで!怖い、怖いから!
「京香さん、何でそこまでバレー出来るのに女子バレーじゃなくてマネージャーなんすか?」
「おい西谷!」
そんな逃げ出したいような私に、ストレートな疑問をぶつけてきたのは汗を拭っていた夕君。慌てて大地君が止めていたが…
そうだな、みんなも不思議に思っていることだろう。
大地君が昨日言ってくれた言葉を思い出す。
「暗くて、いい話じゃないよ…」
いつの間にか青城の3年生も近くに居たのでわたしはゆっくりと話し出した。心配そうな大地君をチラリと見えば、小さく頷いて微笑む。
ーー私には妹がいた。名前は梨香。歳は2個下だから高校3年。私はいつもリコって呼んでた。
若利といつも3人で遊んでた。若利とリコは同い年だからか仲も良くて、若利がバレーを始めて私たちも何の疑いもなく同じように始めた。
知ってる通り、私は負けず嫌いでね。グングンと上達していく若利に負けまいと一生懸命練習した。でも若利は天才、追い付けるはずもなかったんだけどそれが悔しくてずっとずっと練習してた。
リコは私と違って諦めるのが早くてね。若利になんか敵うわけないよお姉ちゃんっていつも言われてた。でも諦めたくなくて、やっと中学の時にウイングスパイカーとしてレギュラーになれた。
でもね、いつも若利と練習してた私には女子バレーの練習が緩く感じて、不満がたくさんあったの。中学3年になった時、リコが中学に上がってバレー部に入って、あぁこれでやっと私がやりたいバレーが出来る。そう思った矢先の出来事だった。
「お姉ちゃん、私バレー辞める」
「は?いきなりどうしたの。何で?今まで頑張ってきたのに!」
「もううんざりなの!バレーバレーって…お姉ちゃんにとって私は自分がバレーを思い切り出来るってだけの存在なんでしょ!」
「リコ、何言って…」
「もう嫌なの!若利もお姉ちゃんも、いつもいつもバレーって…!」
そこでやっと私は気付いたの。リコは諦めたんじゃなくてやりたくなかったんだって…優しい子だったから、私に合わせてくれてたんだって。でも、気付くには遅すぎたんだ…
そこに追い討ちをかけたのは…