第3章 磨励自彊ー2日目ー
「あ!ママだ!」
とおる君の嬉しそうな声にゆっくりと降ろしてあげれば、母親に駆けてく様子を見つめ、無事に再会出来たことに安心した。
何度もお礼を言う母親に大丈夫ですと微笑んで。
「じゃぁねとおる君。もうママと逸れちゃダメだよ?」
「うん!ありがとう京香ちゃん。はじめ君、僕が大人になるまで京香ちゃんのこと頼んだからね!」
「あぁわかった、京香さんのことは任せろ」
「京香ちゃんは俺が守るから安心しなよ」
「はじめ君、とおるにはダメだからな!」
また睨み合う2人のとおる。一君とクスクス笑えば、ほらお母さんの前だからと徹君の背中を撫でる。
大きく手を振るとおる君に私たちも手を振れば、身体から力が抜けてしまったようで、座り込みそうになったところを徹君が支えてくれた。
「京香ちゃん大丈夫?」
「ごめん、安心したら力抜けちゃって…さ、戻ろうか」
右に徹君、左に一君。何だか本当に2人から守られているような自分に擽ったくなる。
ショッピングモールを出ようと歩いていると、及川さんだ!と可愛らしい女の子たちの声が聞こえ、徹君がにこやかに手を振っているのを見つめ、やはりこのルックスじゃモテるよなと妙に納得した。
それならば私が隣に居たらダメじゃんと思えば、少し一君の方に寄って徹君から距離を置く。
「ちょっと京香ちゃん、何で俺から離れるの」
「え、だって徹君モテるし。私が隣に居たら勘違いさせちゃうでしょ」
「確かに俺はモテるけど、勘違いさせておけば良いの」
「否定しねぇのがすげえ苛つく」
「岩ちゃん男の嫉妬は……」
急に黙り込んだ徹君。首を傾げて反対側の一君を見れば般若の形相。段々と小さくなってる徹君を見て吹き出した。
酷い!と騒ぎ出した徹君にまた笑いながら歩いていれば青城まであっという間に着いてしまった。行きはあんなにも長く感じたのに。
「そういえば京香ちゃん、とおる君のお母さん来る前に笑ってたけど、何か想像してた?」
「あぁ、あれはね、徹君がお父さんなら楽しいだろうなって。一君なら頼もしいお父さんだろうなって思ったの」
私の言葉に立ち止まる2人。徹君は何やら考えてるし一君は顔が真っ赤である。心配になって近寄れば、徹君に手を握られ見つめられ真剣な表情にドキッとした。