第3章 磨励自彊ー2日目ー
ー及川sideー
「ねえ岩ちゃん。京香ちゃん何処いったか知ってる?」
「京香さん?あー午後練始まった時に烏野の監督に呼ばれてたから買い出しじゃねえの?」
「午後練始まった時って…もう3時間経ってるけど。何かあったわけじゃないよね」
「確かに…遅ぇな」
ゲームの審判の時、ずっと京香ちゃんの姿が見えなくて隣の得点板に居た岩ちゃんに聞いてみた。買い出しにしてはあまりにも遅すぎる。もしかしたら事故とか、ナンパとか、攫われたりとか!なんて悪いことを想像したらキリがない。
岩ちゃんも顔が険しくなってる。心配する気持ちは同じだよね。
「先生たちに言ってみんなで探しに行くべきじゃない?」
「その気持ちはわかるけどよ、せめて休憩中とかだろ。オイ、そっち得点」
岩ちゃんに指摘されて得点板をペラッと巡る。
何でそんなに冷静で居られるんですか、今すぐにでも探しに行きたいのに。
「そわそわすんな集中しろ。もうすぐ休憩だろ、焦ってもいいことはねぇ。お前が怪我なんぞしたら悲しむのは誰だ、京香さんだろ」
ちゃんと状況判断しろボゲェ。
不器用なりに俺を冷静にさせてくれる岩ちゃん。そうだな、今慌てて飛び出して俺たちに何かあったら悲しみ、京香ちゃんは自分を責めるだろう。岩ちゃんの言う通りだ。ありがとう岩ちゃん。
やっぱり岩ちゃんは俺のお母ちゃんだね。
「てめぇのお母ちゃんじゃねえからな」
すかさず睨み付けてくる岩ちゃん。何で思ったことがわかっちゃうのかなー、まあ俺と岩ちゃんの仲だし?なんてニヤけていたら思い切り軽蔑したような目を向けられた。
「ニヤけんなクソ川キモい」
「そんな目で見ないで!酷い傷付く!」
思わず涙目になって反論するが、興味なさそうに視線はコートに向けられた。
何だかんだ、いつもの俺にしてくれる岩ちゃん。
でも1人のマネージャーが中々帰ってこないってだけで何故こうも不安になるのだろう。午前の出来事といい、彼女のことを無意識に探してしまう。今までこんなことなかったのに…まさか俺まで彼女に本気だというのか。初対面だった彼女に…
素直になろうとする感情と、認めたくない感情がぶつかり合って俺の中でグルグルと様々な感情が渦巻いていた。