第3章 磨励自彊ー2日目ー
ん…?子供?
私の足に抱き付いてきたのはどうやら男の子のよう。
周りをキョロキョロとしても母親らしき女性は見当たらない。
これは迷子か…
「僕、どうしたの?ママとはぐれちゃった?」
「ひっく…うん」
私が頭を撫でながら声をかけると泣き出しそうな男の子。
足から離させて抱き上げると、幼稚園くらいの子だとわかった。
「そっか、じゃあお姉ちゃんと一緒にママ探そう。何処でママ居なくなっちゃったの?」
「んと、あっち」
ゴシゴシと目元を拭った男の子。泣かなくて偉いね!と微笑むとこくんと頷いた。
母親とはぐれたのは玩具売り場。きっと夢中になったんだろうなと思いながらも探してみるものの、居ない。
これは迷子の放送してもらった方が早いかなと思えばインフォメーションセンターに向かった。
「僕、お名前なんて言うの?私は京香」
「京香ちゃん!僕ね、とおる!」
「とおる君か。ふふ…お姉ちゃんの友達にもね徹君って居るんだよ」
「ほんとー?僕と同じだね」
すっかり私に懐いてくれたとおる君。同じ名前だけではなく人懐こい雰囲気まで徹君にそっくりだと思えばクスクス笑った。
「すみません、迷子の子なんですけど…」
インフォメーションセンターに着けば店員さんに声をかける。
中にどうぞと言われればカウンターの中に入り、とおる君を椅子に座らせようとするも離れてくれない。
「とおる君?お椅子に座って、ここのお姉ちゃんにママのこと話そう?」
「やだ!京香ちゃんと居るもん」
「随分懐かれちゃったみたいですね。お母さんが見つかるまで側に居てあげてくれませんか?」
「えぇっ…えっと…」
「京香ちゃん…」
離すまいと必死に私にしがみ付くとおる君。
私がみんなに心配かけるしなと悩んでいると、また泣き出しそうになるとおる君。この子わかってやってるな…なんて思っても無理矢理引き離すことも出来なくて。
わかりました。と頷けば忽ち笑顔になったとおる君。
本当性格まで徹君に似てる。
無事に迷子のアナウンスをしてもらえば、とおる君を抱っこしたまま母親を待つ。
ふと時計を見れば青城を出てから2、3時間経っていて。
あーまた余計な心配かけてるよなーと思うも、とおる君が離れてくれず連絡が出来ない為、早く母親が来てくれないかなと願うしか出来なかった。