第3章 磨励自彊ー2日目ー
暫く貴大君のスパイクの練習に付き合う為にトスを上げた。
やり始めよりフォームは綺麗だ。気持ち良く打っている貴大君を見ると私まで清々しくなってくる。
「なあ、あいつら何してんの?」
「知らね。両主将と副主将に影山、だっけ?混ざりたくはねえ」
「だよな、俺もだ」
一静君の言葉に指を差された方を見れば、何やら真剣な顔で話している5人。先程のメンバーに大地君がプラスされているようだが。
何かあったの?と聞かれれば、わからないと素直に首を振る。
「ま、岩泉が居るから大丈夫だろ」
「一君への信頼は厚いんだね」
「まあ、及川止められるのはあいつだけだし。一番の常識人」
当然とでもいうような2人の言葉に思わず笑ってしまった。
「そろそろ休憩終わるし、お昼の支度してくるね。また何かあったら呼んで?」
「わかった、京香さんありがとう」
時計を確認して、貴大君と一静君に手を振れば5人の元へ。
マネージャーたち抜けるからね、と言う為に
「俺も…渡す気はないよ。スガにも影山にも、勿論及川や岩泉にも」
「大地…それだけ本気なんだな」
「あぁ、譲る気はないさ」
「んで?岩ちゃんはどうなのさ。ここまで烏野に言わせちゃって、言い返さなくて良いの?」
「俺は……」
「休憩終わりだぞー!練習再開しろー!」
「溝口君タイミング悪すぎ!あれ、京香ちゃんどうしたの?」
「あ、私そろそろお昼の支度してくるから抜けるね?」
「うん、行ってらっしゃい」「はい、わかりました」
両主将に言えば、2人を連れて体育館を出る。
結局あの5人は何について話していたのかわからなかったが、真剣な顔だったから代表決定戦のことだろうなと想像する。
3年にとって最後の大会。そりゃ譲れないものだろう。
みんなバレー好きなんだなあと1人嬉しくなった。
「1つ提案なんだけどいい?」
「なんだ?」
「京香ちゃんに気持ちを伝えるのは結構。でも春高終わるまでは返事は貰わない。ウチも烏野も、レギュラー内でギスギスするのは避けたいだろ」
「そうだな。まずは目の前のこと優先だ」
「飛雄、お前が一番心配だけど」
「う…わかってます」
私が立ち去った体育館で、先程の5人がこのような協定を結んでいるなんて。勘違いしている私にはわかるはずもなかった。