第3章 磨励自彊ー2日目ー
ー菅原sideー
「スガさん聞きました?練習始める前に京香さん階段から落ちそうになったらしいっすよ」
「京香さんが階段から?!」
「まぁ、あの優男が落ちる前に助けたらしいっすけど…京香さんにベタベタ触りやがって…!」
「た、田中落ち着け!怪我がなかっただけ良かったべ」
休憩中、田中が及川を凄い顔とオーラで睨みながらも話してくれた内容に心臓を強く掴まれるような思いだった。
田中を宥めながら俺も及川を見る。
だから午前練の間、京香さんのことあいつは気にしてたのかと納得した。怪我がなくてホッとしている反面、助けたのが俺じゃないって言うのがモヤモヤする。
及川は女性の扱いに慣れているから、欲しい言葉を、態度を彼女に与えているんだなと思うとモヤモヤはドス黒いものになっていく。
京香さんを取られたくない。彼女を守るのは俺でいい。
「ス、スガ…?怖い顔してどうしたんだよ…」
「あ、悪い!ちょっと考え事してただけ」
いつの間にか表情にも出ていたらしい、旭がビビりながら声を掛けてきたのにハッとして軽く首を振ればモヤモヤを飛ばして笑みを浮かべる。
「お、おい影山!」
田中の声に振り向けば、影山が眉間に皺を刻み歩いていく。
どうしたんだ?と旭と首を傾げながら見ていると、向かった先は京香さんのところ。
あ、あいつ話聞いて…全くすぐに行動に移すんだから!
「旭、京香さん助けに行ってくる」
「お、おう…?」
よくわかってないような旭の背中を叩いてから影山が向かった先に俺も急ぐ。と、俺よりも先に影山を止めたのはーーまた及川。
くそ、何で京香さんは青城のマネしてんだよ。
烏野に居れば俺が守れるのに。
段々と俺の中を支配してくる独占欲らしきもの。
ダメだ落ち着け、と少し立ち止まって息を吐いてから歩みを進める。
「京香さんは俺が守ります」
「何言ってんのお前、お前が守れると思ってんの?」
「及川さん、あんたよりは守れます。俺は好きな人だけを見てるんで」
「はあ?ほんっと生意気なクソガキ…俺だって好きな人は守れんの。今だって守ってんだろ」
考え事をしているのだろうか、ボーッとしている京香さんを挟んで影山と及川による睨み合いと言い合いが始まっていた。