第2章 為虎添翼ー1日目ー
ー影山sideー
「縁下ー!風呂行こうぜーって…何だア?影山と縁下とか珍しいコンビじゃねえか」
「あぁわかった行くよ。良いだろ?俺が影山と話したって。ま、そういうことだな影山、暴走だけはすんなよ」
「はい、あざす!」
3年生が帰ってきたので田中さんが縁下さんを呼びにこっちに来た。確かに普段縁下さんと2人で話すなんてことねえから不思議がられたけど、立ち上がった縁下さんに軽く頭を下げる。
荷物が置いてある方に移動すれば、話し相手が居なくなった為か日向が絡んでくる。
「おい影山!無視することねえだろ!」
「うるせぇ!日向ボゲェ!」
京香さんのことが好きなんだ、と自覚してからそわそわとしてきた。会いたくて、会いたくて仕方ねェ…
日向を黙らせてからスマホを握り締めて呼び出そうかとしてみるものの何て言えばいいのかわからなくて唸る。
こういう時及川さんなら何て言うだろう。あの人は慣れてるだろうから最も簡単に呼び出せるんだろうな、と考えてはたと気付く。
バレーのこと、聞けば良いんじゃねえか。あの人は烏野のコーチだ、別に怪しまれることもない。
そうと決まれば早速連絡を取ろうとするも、風呂の順番が回ってきたようだ。チッと舌打ちをすれば近くに居た日向が近付いてくる。まさかバレたか…!
「なんだよ影山、さっきから考え込んだりスマホ見てたりさあ…」
「何でもねえよ!」
「王様が考えるなんて明日雪でも降るんじゃないの?」
「あ゛あ?」
「ま、まあまあ影山もツッキーも落ち着いて!ほらお風呂行こう」
どうやら日向にも月島にもバレてねぇみたいで安心する。
山口に宥められてタオルとかを持てば風呂場に向かう。
京香さんに会いたい一心で風呂から早々に出れば部屋に戻る。そしてスマホを掴み部屋から出て突き当たりのベランダに出た。ここなら2人で話せる、そう思えば連絡をした。
『3階一番奥のベランダで待ってます』
ベンチに座れば風が少し冷たく感じた。妙に心拍数が上がっている心臓と火照った顔を冷ますのには丁度良かった。
暫くすると京香さんが来た。
抱き締めたくなって立ち上がるも、縁下さんの言葉を思い出せばそこに留まる。暴走すんな…落ち着け。
京香さんが隣に座ったのを確認すれば俺も座る。
何だかまともに顔が見れなくて俯いた。