第1章 合縁奇縁
私はもともと目とカンが良かった。
その人について集中して見ていれば、何を考えているのか何となくだが予測が出来るほど。
それはバレーに関しても同じことで、選手のクセ、どこにボールが上がるかの目線、その学校のパターン、それを独自に分析する力が人よりあったのだと思う。
おそらくそれは小さい頃から若利と共に育ってきて、あいつの無表情から感情を読み取らなければならないという必然性から身につけたものだと私は思っている。
白鳥沢バレー部へと入部してから、部員ひとりひとりのクセをノートにまとめていった。
そのノートを役立てて欲しいと、監督の鷲匠さんに持って行ったときのこと。
「鷲匠監督、ちょっと良いですか?私なりに選手のクセ等をまとめてみたんです。練習とかの参考にしていただければと・・・」
「ん?どれ見せてみろ・・・」
いつも部員に怒鳴っている監督。出すぎた真似したかなと思いながらも私が出来ることをやりたいと思って、ドキドキしながらページをめくる監督を見つめる。
そしてパタンとノートを閉じてからジッと私の方を見てきたので怒られるのかと身体を強張らせる。
「・・・流石だな。よく選手のことを見ている」
「あ、ありがとうございます!」
「京香、このノートを参考にお前なりに奴らにアドバイスしてみろ」
「・・・アドバイス、ですか?」
「そうだ、クセを把握させ個々の力を伸ばす。お前にはそれが出来る。頼んだぞ」
怒られなかったことに対して凄く安心したのだが、思いもよらない言葉に暫く動けなくなった。
私が選手にアドバイスを?そんな恐れ多いことを!?
ただでさえ白鳥沢という強豪校バレー部の部員だ、他の学校の選手よりも当然うまい。
まあ若利のようなずば抜けている選手は居ないのだけれど。
しかし、あの鷲匠監督から頼まれたとまで言われてしまえば断れるはずもなく、少しずつアドバイスをしていってみようとグッと拳を握り締めて気合を入れた。