第1章 合縁奇縁
練習試合の休憩中、私がタオルやらドリンクやらで忙しく走り回っていると覚がひょっこりと私の視界に入ってきた。
「ん?覚どうしたの?ドリンク足りなかった?」
「んや、大丈夫ですけど・・・京香さんなんか良いことでもあったの?」
「いいこと・・・?んー、あったと言えばあったかな」
「やっぱりぃ。若利君も京香さんも楽しそうだなって思ったんですヨ」
ゴクゴクとドリンクを飲みながら、若利と私を比べるように見ながらニヤニヤとしている覚。
私が先ほどの若利と烏野の二人の話をすれば覚の目が一段と大きくなった。
「あの若利君が誰かに興味もつなんてねぇ・・・」
「覚も話してみたらわかるよ。・・・彼らは面白い」
「んぁ、もしかして烏野に行こうとか思っちゃってます?若利君に見つかったら怒られますヨ」
「ふふ、若利にもね釘刺されちゃった。でもさ、私見てみたいの。あそこまで言う子達のバレー!若利には内緒ね?」
なんて唇に指を当てて微笑めば、少しあきれたように笑ってから覚は頷いてくれた。
その反応にクスクスと笑いながらも、ありがとうと言えば休憩終了のアラームが鳴って、部員達に休憩終了を告げる。
「あ、京香さん。黙っている代わりに、女神の力貸してくださいよ」
立ち上がって、練習に戻っていく覚が振り返ったと思ったらそんなことを言い出した。
――勝利の女神様
高校生のときの私の異名。
幼い頃から若利と共にバレーをやっていて、負けず嫌いの私は若利と同じメニューをこなすまでにバレーに打ち込んだ。
しかし、選手として自分が活躍するのは好きではなく、女子バレーの推薦をすべて断ってマネージャーという道を選んだ。
正しく言うと、若利に選手としてやらないのならば白鳥沢のために働くべきだと言われたから。
私が入学する前から強豪校だった白鳥沢。
私なんかが力になるのならば、と快諾して入ったバレー部。
その時はまだ王者とまでは言われていなくて、必ず全国へ行けるわけではなかった。