第2章 為虎添翼ー1日目ー
「2人とも準備はいいね?京香ちゃんの言う通り無理して怪我しないこと。2人とも大事なエースなんだからね?」
「わかってる」
「あぁ…」
「よし、じゃあ決勝戦を始めるよ!…レディー…GO!」
今一度徹君が2人の顔を見ながら確認する。目線は目の前の相手から外さないまま闘志がみなぎっている表情の2人が頷いたのを見れば満足そうに笑ってから闘いのゴングが鳴らされた。
「っぐ…」
「う、く…ッ」
「旭ー!」「旭さーん!」「岩泉ー!」
最初から全力の2人。流石パワーのエース対決。
その力は互角らしく、その場から動いてないように見える。
みんなの声援も熱が入ってきて声も大きくなっている。
試合が動いたのは暫く経ってから。
仕掛けたのは一君。
旭君が少し疲れていたのがわかったのだろうか、畳み掛けるように力を加えると旭君が押され始める。
「旭!諦めんな!」
「旭さん根性っす!」
「いけ岩泉!勝負決めてやれ!」
見ている此方がハラハラしてくる。
旭君が懸命に立て直そうとしているのだが、一度押されてしまえば一君の力に勝てずに机に倒された。
「勝負あり!勝者、我ら青城エース岩ちゃん!流石パワーごり、あだっ!痛いよ岩ちゃん!」
「うっ、せえ…一言余計だクソ川…!」
「はぁ、岩泉強いなー」
「いや、お前も十分強かった。またやろうぜ」
「あぁ」
一君の腕を高く掲げた徹君だが、余計な一言を言った為に一君に殴られていた。一君も旭君も息をきらしている様子を見ると相当疲れたようだ。しかし、一君から手が差し出されてガッチリとした握手。旭君と一君の間で友情が芽生えたよう。
あぁ良いなあ素敵だな。て思えば視界がぼやけてきた。
うそ、私感動して泣きそうになってる。
涙腺弱くなってるな、と感じれば少し輪から離れて目元を拭う。
ぽん、と頭に大きな手が乗せられあやすように撫でられる。
ふと見上げればみんなから私が見えないように立っていてくれている大地君。その表情は優しく、包み込んでくれるような。
「大丈夫です、みんなからは俺で見えないから…」
「大地君、ありがとう。ちょっと感動しちゃって」
「はは、京香さんを感動させてるのが俺じゃないのが気に入らないけど…こうしてるの気付いたのが俺だから、それで良しとします」
ニカッと笑った大地君は再び私の頭を撫でた。