第2章 為虎添翼ー1日目ー
準決勝は旭君対貴大君。烏野は旭君が負けたら全滅。必然的にプレッシャーがかかっているようだ。
「旭さん!大丈夫っすよ!」
「やったれ旭!」
「今日こそ岩泉に勝ってやる…!」
夕君や孝支君に背中を叩かれビクッとする旭君。
貴大君は一君しか眼中にないらしく、指を差して燃えているようだ。
「よし、じゃあ2人とも準備してー!岩ちゃんへの挑戦権を獲得するのはどっちか…!いくよ?レディー…GO!」
審判は徹君。ガッチリと手を組ませれば準決勝が開始された。
腕を見る限り、2人とも本気で力を出しているようだ。各校の声援を背にいい勝負が繰り広げられている。
思わず私もグッと拳を握るも、何方かを応援することが出来なくてジッとその様子を見つめる。
「うおおお!」
「うぐっ…マジかよ…!」
旭君が勝負を決めるために声をあげながら力を加えると、そのままグググと押し始める。一旦そうなってしまうと態勢を戻せるはずもなくそのまま貴大君の手の甲は机に倒された。旭君の勝ちである。
「旭さんすげー!」
「やるじゃん旭!」
「流石うちのエースだな」
「だあああ!悔しい!岩泉以外に俺が負けるなんて!」
「どんまいマッキー」
「目の前の相手見てねえから負けんだよ花巻」
勝った旭君の背中をバシバシと叩く大地君と孝支君。その後ろでは夕君と翔陽君が飛び跳ねて喜んでいる。
一方負けて机に突っ伏している貴大君を慰めるように背中を撫でているのは徹君。一君は腕を組んで険しい表情をしているが、仇はとると肩に手を置いて旭君を見つめる。
男の友情ってやつだろうか、その光景が羨ましく感じた。
「さあ決勝戦始めるよー!烏野エース君対青城エース岩ちゃん!」
「エース対決…!」
「岩泉負けんなよー!」
「旭さんそのままの勢いで優勝っす!」
徹君が盛り上げる為にとマイクを持っているフリをして2人を座らせる。青城は貴大君と一静君が、烏野は龍之介君や夕君が声援を送っている。バレーの試合同様燃え上がっているようだ。
「さぁ、勝利の女神京香ちゃん!2人に声援を!」
「私?!…2人とも頑張って、怪我はしないように!」
徹君からマイクが振られる。それに驚きながらも声援を送ると満足そうに笑った一君。旭君も力強く頷いた。
ガッチリと手が組まれればシンと静かになる。
2人の気迫に私も息をのんだ。