第2章 為虎添翼ー1日目ー
午後の練習がほぼゲームだったから、食堂に来る頃にはみんなヘトヘトかなって思っていたんだけど、徹君には抱きつかれるし両校で火花散らしてるし…私が心配するまでもなかったみたい。
翔陽君と飛雄君は相変わらず競ってるし、夕君はあまり食べてない蛍君と忠君に食べさせようとして嫌がられてるし…
多めに作ってあったカレーも、高校生たちの胃袋に全て収まってしまったようだ。恐るべし食欲。
潔子ちゃんと分担しながら食器や鍋を洗う。
ふと強い視線を感じて振り返れば、夕君と龍之介君が涙を流しながら此方を凝視していた。
「京香さん、関わっちゃダメ」
「う、うん…よく平気だね潔子ちゃん」
「ああいうのはスルーしておくのが一番。慣れです」
どうしたものかと考えていれば、潔子ちゃんにそう言われ私も洗い物を再開する。流石だわ潔子ちゃん。
洗い物が終わり、何やら騒がしくなったテーブルの方を振り返れば、どうやら腕相撲大会が開かれている模様。
どこから持ってきたのか一君の肩にはチャンピオンという襷がかけられている。
「うおおおおおお!」
トーナメント方式なのか、翔陽君と飛雄君が現在戦っている。
翔陽君は叫びながらやっているのだが、グググと押され始めれば軍配は飛雄君に。
「影山のバカ力!」
「てめぇはうっせえんだよ!日向ボゲェ!」
「みんな元気だね」
「岩泉が腕相撲強いって聞いたからさ、みんなで挑んでみようって。俺はもう花巻に負けちゃったけど…」
ふとトーナメント表らしいのが見えて覗き込めば、孝支君が書き込んでいる。参加者は、翔陽君、飛雄君、旭君、大地君、夕君、龍之介君、孝支君、貴大君、そしてチャンピオンの一君。
「へぇ、貴大君強そうに見えないのにね?」
「あいつ強かったべ。いつも岩泉に挑んでるみたいだけど…烏野だと、旭とか田中が強いんだけどこいつら1回戦で当たっちゃって。ギリギリ旭が勝ったんだけどね」
「確かに2人共スパイク威力凄いしね。やっぱりウイングスパイカー有利なのかな?」
「確かにそうかも。あーあ、俺ももっと腕力付けなきゃ…京香さん守れるように」
「ふふ、私はそこまでか弱くないよ。元ウイングスパイカーよ?若利に負けまいとやってきたから…」
「じゃあ、俺と勝負する?」
いつもの笑顔の孝支君。
負けず嫌いな私は闘志を燃やして頷いた。