第2章 為虎添翼ー1日目ー
私が小さく頷いたのがわかったのか満足そうに徹君は笑ってから烏野コートを指差す。その先にはー…大地君?
再び視線を徹君へと戻せば、綺麗なジャンプサーブのフォーム。
私のジャンプサーブより数倍威力のありそうなそれを見事に大地君の方へと打てば、バシンとレシーブした音が聞こえるもボールはコートの外へ。
あの大地君でさえ勢いを殺しきれないなんて…
あの威力を保ちながら正確なコントロール。相当練習しなければ身につかないものだろう。徹君もバレーに関して妥協しない、努力し続ける人なんだと感じた。
それと同時に小さな不安が胸に積もる。少し肩に負担がかかっているかもしれない、そう感じれば後で話をしてみようと思った。
「よし、じゃあ休憩だ」
入畑監督の声で息をきらし、肩で呼吸している部員たちはその場から動けないようだった。そうだ私青城のマネじゃん!
ハッと気付けば部員たちにドリンクとタオルを渡していく。
「一静君お疲れ様。ブロックの時ねー…あとスパイクがー…」
「へぇ…凄いね京香さん。気を付けてみるよ」
「うんやってみて。あ、一君もお疲れ様。スパイク踏み込む時がねー…」
「…っつーことは、こうすべきってことっすか」
「そうそう。徹君!疲れてるとこ悪いんだけど、一君に一本トス上げてくれる?トス少し高めで」
「はーい!岩ちゃんいくよー」
一静君にドリンクを渡しながらアドバイスをして、近くにいた一君にも話す。理解してくれたようなので、徹君を手招きしてトスを上げてもらえばスパイクを打った一君は驚いたような表情で自分の手を見つめている。
「おー!良いね一君。打点も威力も上ったでしょ」
「すげぇっす…」
「流石京香ちゃん!ねえ俺には?」
「そうね、徹君のサーブは凄いと思う。でも肩に力が入りすぎると負担かかるよ。オーバーワークもしちゃダメ。わかった?」
「うぐ…何で京香ちゃんにはバレちゃうかなあ…"勝利の女神様"は誤魔化せないか。…あ」
慌てて口を塞いだ徹君だがもう遅い。バッチリと聞いたらしい一君達は私を見て驚いている。
「それ本当?!すげえ、俺中学ん時白鳥沢まで見に行ったんだよ」
「それなら納得。道理で的確なわけだ…」
興奮してるらしい貴大君、一静君は何度も頷いて納得しているようだ。そして一君はそのまま固まっている。