第2章 為虎添翼ー1日目ー
「そういえば、午後のメニューって何ですか?」
「午後はずっとミニゲーム。多分チーム分けはA、Bいつも通りだと思うけど…烏養コーチに聞いた方がいいかな」
「青城とミニゲーム…」
「ふふ、旭君そんな深刻に考えないでよ。代表決定戦前に練習試合出来るとか有難いことなんだから」
「そうだぞヒゲちょこ!」
「旭さん!ブチ抜いてやりましょう!」
烏野はよくバランスが取れている。誰かのマイナスをみんなでプラスに変えてしまう、そんな力があると思う。いい学校だ。
ーー『もう私バレーなんてしない!お姉ちゃんなんか大っ嫌い!』
『リコ、待って!若利離して!リコ!』
『あいつはお前と違って才能がない。これ以上やっても無駄だ』
『わかったような口きかないで!あの子は…』
「…さん、京香さん?」
「えっ、あ…ごめんボーッとしてた」
大丈夫ですか?と心配そうなみんなに、大丈夫と微笑んだ。
どうやら昔のことを思い出したらしい。今更こんなこと思い出すなんて…振り払うように小さく首を振ればご飯を食べ終わる。
「じゃあ私片付けてくるね。また見て欲しいことあったら言って?」
「はい、よしそろそろ行くぞー」
烏野が食堂から出て行ったのを確認すれば小さな溜め息を一つ零した。しっかりしなきゃ、選手を支えられるように。
「京香さん、あんまり一人で抱え込まないで下さいよ?」
「うえっ…あれ、大地君」
「やっぱり心配で…みんなには先に行ってもらいました」
不意にぽん、と頭に置かれた大きな手。びっくりして顔を上げれば部員を率いて体育館に向かったはずの大地君。
心配そうな、眉を下げて笑う顔をさせているのは紛れもなく私で。慌てて大丈夫だからと笑みを作れば、コラ!と怒られた。
「俺は無理して笑って欲しいわけじゃないんです。たまには弱音吐いていいんですよ…俺は年下だから頼りにならないかもしれないけど、京香さんの力になれれば…嬉しいです」
「大地君…ありがとう。話聞いて欲しくなったら、甘えさせてもらうね」
「はい、いつでも待ってますから。京香さんの心から笑った顔が俺好きだから…」
頭に乗せられた手がゆっくりと私の頬に添えられる。
大地君の真剣だけど優しい表情を見てると鼓動が早くなってくる。
どうしよう、私は大地君から目が離せなくなっていた…。