第2章 為虎添翼ー1日目ー
ー及川sideー
合宿所を案内すれば、飛雄や菅原クン、坊主クンたちに睨まれて岩ちゃんにも睨まれたから大人しく体育館に戻る。
「じゃあまた後でね!京香ちゃん」
「っ!…う、うん」
勿論、美人ちゃんに声をかけてから。
名前はさっき飛雄たちが呼んでるのを耳にした。
ちょっと警戒されてるかなーでも合宿だからチャンスはあるよね。
「何だよクソ川キモい」
「ちょっとキモいは酷い!傷付く!」
フンヌフーンなんて鼻歌をうたいながら岩ちゃんと歩けば距離を置かれた。最近岩ちゃんがストレートで結構傷付く。
でもなんだかんだ俺と一緒に居てくれるから、俺のこと大好きなんだよね。そんなこと絶対に言えないけど!
体育館に戻って軽く練習していれば烏野が入ってきた。
京香ちゃんは烏野の監督に呼ばれて溝口君の方へ。
これはチャンス。岩ちゃんにバレないように監督たちの方へ行き、京香ちゃんの肩に手を回す。
逃げようとしても無駄。女の子の力で勝てると思ってるの?
「ええ、本当です。しかし、表沙汰にはしたくないので秘密にしておいて下さい」
「俺嬉しいなあ…気になってたんだよね、"女神様"の力」
「及川、いい加減にウ チ の京香さん離してくれないか」
"勝利の女神様"だと素直に認めた京香ちゃん。
でもその表情は曇っていて、何か理由がありそう…
少し考えていると誰かに手を払われる。澤村クンだ。
悉く邪魔してくるなあ…俺のって言えないなら口出さないでくんないかな!
京香ちゃんは逃げちゃうし…
「酷いなあ…あ、澤村クン。京香ちゃんこっちに頂戴。ほらマネージャー居ないし大変なんだよねえ」
「何でそうなるんだよ。青城は部員が多いだろう」
「でも烏野にマネージャー3人も要らないでしょ」
「京香さんはコーチであってマネージャーじゃない」
俺は京香ちゃんの前で交渉してみる。きっと烏野マネちゃんたちを渡さないだろうから青城に来るのは京香ちゃん。
それを本人に言わせれば澤村クンだって納得するしかないもんね。
俺の思い通りの言葉はすぐに聞こえた。
腑に落ちない表情の澤村クン。
でもこれで堂々と京香ちゃんと一緒にいれる。
ーこの時感じた少しの優越感に俺は気付かないフリをした。