第2章 為虎添翼ー1日目ー
…はい?今何と仰いましたかね。部活中だからね君たち。
ちょっと、今国見君私と目が合ったのに!
面倒くさそうに見られてそらされた…
おい君の先輩たちを何とかしろ…
「お前ら遊んでんじゃねぇ!」
バコッと何かが徹君の後頭部に勢いよくぶつけられて、痛みにしゃがみ込む。
そこに居たのは鬼の形相の岩泉君。
いや、今の私には神様に見える。神様仏様岩泉様。
「た、助かったよありがとう一君」
「あ、いや、うちの部員がすみません」
「あれ、岩ちゃん照れてるー」
「あぁ?うっせぇよクソ!」
「ちょっと待ってよ!名前すらなくなってるから!ちょ、痛い!岩ちゃん手加減して!」
怯んだ両サイドの2人の間をすり抜けて岩泉君の後ろへ。
ただ他の3年を名前で呼んでるのに彼だけ名字っていうのもなと思えば名前で呼んでみる。すると、たちまち顔を赤くさせてしまい徹君が茶化すものだからボールを投げ付けられている。
「あのっ、京香さん今、大丈夫ですか?サーブ見てもらいたくて…」
「ん、忠君大丈夫だよ。どう?少しずつコツ掴めてきた?」
「少しずつ、ですけど…」
「京香さん!何もされてませんか大丈夫っすか」
「だ、大丈夫!さ、飛雄君のサーブも見てあげるね」
「あざす!」
遠慮がちに声をかけてきたのは忠君。休憩はまだ終わらないし、頷けば烏野が居る隣のコートへ。
心配そうな顔の飛雄君が駆け寄ってきたから、微笑んでから頭を撫でた。
旭君や翔陽君も見て欲しいとのことだったので1人ずつジッと見つめる。
「忠君、トスが低い。高過ぎてもダメだけど、トスはこのくらい。前に投げ過ぎないようにね」
「あぁあ!京香さんもう一本!」
実際にジャンプフローターサーブを打ちながら教える。
反対のコートでレシーブの構えで待っている夕君の前に落ちて、あげられないと悔しそうに声をあげる。
ジャンプサーブも打ちながら教えていれば、潔子ちゃんに声をかけられる。
「あ、もうお昼の支度?わかった行こう。一君!お昼の支度してくるからそっち宜しくー」
「はい、わかりました!」
「ちょっと京香ちゃん?!何で岩ちゃんなの!主将は俺!」
一君に食堂へ行くと告げればすかさず徹君から抗議の声があがる。
クスリと笑えば潔子ちゃんと仁花ちゃんを連れて体育館を出て食堂へ向かった。