第2章 為虎添翼ー1日目ー
「おー、結構広いね」
「3人で使うには十分ね」
「はわー…」
「さ、私たちの仕事は山ほどあるからね!頑張ろう宜しくね」
「ええ、宜しくね」
「ああ足引っ張らないように頑張りましゅ!」
部屋を見渡してから荷物を置き、2人に改めて言えば笑顔で返してくれた。なんて可愛いんだろう…この2人を私が独り占め…神様ありがとう…!
自分のタオルを持って部屋から出れば、大部屋の前でみんなと鉢合わせ、そのままゾロゾロと第二体育館へと向かう。
「宜しくお願いしあーす!」
「「お願いしあーす!」」
大地君を筆頭に体育館へと入れば、白鳥沢とまではいかないが結構な部員が見えた。さすがに強豪校…レギュラー争いも大変そうだ。
あ。あのピンクの髪は花巻君だ…やっぱり居た…!
隣に松川君も居るじゃん…!
しかもレギュラー?!
「…?京香さん何してるの」
「ちょ、ちょっと匿って…」
「…はぁ…?」
たまたま近くにいた蛍君の背中にくっつくように移動すれば身を隠す。腑に落ちない表情を浮かべながらも意地悪をしない蛍君を後で褒めてあげよう。
「京香さん!此方へお願いします」
「うげ…蛍君、ありがとう」
まだ見つかってないことにホッとしてるのも束の間、武田先生に呼ばれてしまえば隠れていることも出来なくて、蛍君の頭を撫でたかったのだが届くはずもなく背中をポンポンと撫でれば武田先生の方へ行く。
あぁ青城部員からの視線が痛い…
「京香さん紹介しますね。此方青城監督の入畑さんとコーチの溝口さん」
「初めまして。真澄京香と申します。期間限定の烏野コーチ補佐をしています。宜しくお願いします」
「あぁ、宜しく頼むよ。…ところで、どこかで見たことがあるような…」
「あ、私高校は白鳥沢でバレー部のマネージャーしてました。恐らく青城とは何度も当たっているので…」
「なるほど道理で…」
入畑監督に見たことがって言われた時にビクッとしたけれど、私が説明したことに納得してくれたのか一安心だ。
しかし、いつの間にか私の隣にいた要注意人物の言葉に再び私は逃げ出したくなるのである。
「何言ってるんですか監督。京香ちゃんはあの"勝利の女神様"ですよ。ねっ☆」
それはご丁寧にウインクをして、私の肩に手を回した及川君だった。